邦画史上最もロックな映画監督 石井岳龍って何者?

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熱狂的なファンが多い、石井岳龍監督の映画を知っていますか?学生時代から撮り続けた作品は、ロックと共に作られたものが多くあり、主に男性から絶大なる支持を得ています。そして、この春には、『蜜のあわれ』で幅広く知られることになった石井監督について、今までの作品と合わせて見てみましょう。

常にチャレンジし続け、映画を超えた映画を生み出す監督・石井岳龍

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1957年福岡で誕生し、日本大学芸術学部に入学。その直後に設立した自主映画グループで撮影した『高校大パニック』がカリスマ的な人気に。
1978年には”ぴあフィルムフェスティバル”に入選し、その後コンスタントに映画を製作。海外でも注目されるようになります。
石井聰亙(そうご)の名で作品を作り続け、2012年『生きてるものはいないのか』から石井岳龍に改名しました。
独特の感性で描き出す作品は、音楽、映像共に攻撃的な印象を受けることもあり好き嫌いがはっきりと分かれる場合もあります。しかし、映画のみならずミュージックビデオなどでも発揮されているインパクトのある映像美は、最新作『蜜のあわれ』でも、見る人を釘付けにします。

二階堂ふみの魅力を存分に堪能できるファンタジー『蜜のあわれ』

『蜜のあわれ』映画オリジナル予告編

ひとりの老作家(大杉漣)と共に暮らしている少女・赤子(二階堂ふみ)。真っ赤なドレスを身にまとい、時に子供っぽく時に妖艶にふるまう彼女は、実は金魚でした。人と金魚の姿を気まぐれに使い分けることは気にも留めず、赤子の美しさと人懐っこさに夢中になる老作家。ある日、彼の前にかつての恋人が幽霊となって現れます。

室生犀星の晩年の小説を映画化した作品。映像化は難しいと言われてましたが、石井監督は原作を読み、軽妙な会話や、幻想的、官能的な雰囲気をファンタジックな映画として完成させました。どこからどこまでが現実なのか。不思議な不思議な物語です。真木よう子、高良健吾、永瀬正敏など個性的なキャストの魅力も楽しめます。

ひとりの青年がどん底から抜け出すための戦い『ソレダケ/that’s it』

『ソレダケ / that’s it』映画オリジナル予告編

父親に虐待され、戸籍を売り払われた大黒(染谷将太)。裏社会の調達屋・恵比寿(渋川清彦)から奪った財布に入っていたハードディスクには、闇の商売に使う個人情報が入っていました。しかし、渋川に監禁されそこで風俗嬢の阿弥(水野絵梨奈)と出会います。協力して脱出した2人でしたが再び捕まり、千住(綾野剛)から非情な拷問をうけ…。

日本のロックバンド・ブラッドサースティ・ブッチャーズの音楽を全編に使用し、アングラで生きる青年を描いた青春映画。ブッチャーズと親交の深かった石井監督が、リーダー・吉村秀樹とタッグを組んで制作するはずだったのですが、吉村秀樹急逝の知らせを受けて石井監督はその遺志を継ぎ完成させました。前半、命を失ったかというシーンまではモノクロ映像が続き、その後からカラーに変わります。そこから大黒と阿弥の反撃が始まります。
主演の染谷将太は、ふつふつとした怒りを抱えた大黒を好演。また、闇社会を生きる大人たちを演じる渋川清彦と村上淳が、渋かっこよくいい味を出しています。

電気男ふたりの大バトル!『ELECTRIC DRAGON 80000V』

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竜眼寺(浅野忠信)は破壊衝動を持ち、エレキギターを爆音で鳴らすことでそれをコントロールしています。特別な帯電体質を持つ彼は、爬虫類専門のペット探偵として働いていました。一方、彼を憎む雷電(永瀬正敏)も幼い頃の事故で力を得た男。昼は電気屋、夜は電波を悪用する者に制裁を加える雷電仏像として生活しています。ある日、雷電が竜眼寺のペットを殺しギターを破壊したことで、2人の電気バトルが始まるのでした。

渋さと色気を持つ大人の男性として、今やベテラン俳優と言われる浅野忠信と永瀬正敏。BGMと浅野忠信がかき鳴らすエレキギターの音、そして後半のふたりのバトルからほとばしるパワーがすごい!全編モノクロ。2001年の作品です。

ロック好きにはたまらない爆音が響く世界『爆裂都市 BURST CITY』

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近未来、荒んだ都市の貧民街は、ふたつの勢力に分かれていました。ひとつは暴力団、もう一つはドラッグレースや、ロックに明け暮れる若者たち。佐々木(陣内孝則)率いるバンド”バトルロッカーズ”は、そのライバルバンド”マッド・スターリン”との争いが原因で警察に制圧され、演奏もレースもできない状態になってしまいます。一方、貧民たちはやくざの菊川ファミリーに奴隷扱いされ、原子力発電所建設に利用されようとしています。絶対的なレースの力を持つキチガイ兄弟も加わり、鬱屈した住民たちの不満が爆発し壮絶な戦いが繰り広げられるのです。

当時のロックミュージシャンたちが、多数協力したことでも話題となった作品です。現在は俳優として活躍しており、かつて”ザ・ロッカーズ”のボーカルであった陣内孝則をはじめ、ザ・ルースターズの大江慎也、泉谷しげるなどが出演しています。

石井監督のロックと映画への愛を感じる『狂い咲きサンダーロード』

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近未来のとある都市”サンダーロード”。暴走族たちが争うこの地で、新たな道交法が施行されることになります。それを機に暴走族同士の休戦協定が結ばれ、暴走を辞めることを考える健(南条弘二)。それに反発した仁(山田辰夫)たちは、自らが新たなリーダーとなり暴走を繰り返しますが、協定により誕生した暴走族連合組織・エルボー隊により制圧されます。元リーダー(小林稔侍)に助けらる人たちですが、国レベルでの争いに巻き込まれていき…。

石井監督が、大学の卒業制作として発表した作品です。学生映画としては異例の有名ミュージシャンの楽曲提供、全国公開…そしてブルーリボン賞など、多くの国内映画賞を受賞しました。

癖の強い作風に賛否両論ある石井監督の映画ですが、それぞれの作品が持つエネルギーは、たくさんの人を魅了する力があります。映画好きなら、一度はロックテイスト漂う石井流青春映画を体験してみてください!

『蜜のあわれ』
4月1日(金)より、新宿バルト9他にてロードショー
©2015『蜜のあわれ』製作委員会

『ソレダケ / that’s it』
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