「箱のアーティスト」ジョゼフ・コーネルの世界を覗いてみよう

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出典:https://lorenzduberry.wordpress.com/

「箱のアーティスト」と呼ばれているジョゼフ・コーネルをご存知ですか?小さな箱にノスタルジーで詩的な世界を詰め込んだ彼について紹介します。

ニューヨークからほとんど出ることのなかった生涯

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出典:https://dominiquegilpin.wordpress.com/

1903年12月24日生まれ。アメリカのニューヨーク州出身。テキスタルデザイナーで小売商の父親と、幼稚園教諭の母親のもとに、4人兄弟の長男として誕生しました。父親が1917年に亡くなると、残された家族は苦しい生活を強いられるようになります。学校にも入学しましたがジョゼフは卒業しておらず、彼は生涯のほとんどを母と小児脳性麻痺の弟とともに暮らし、弟の世話に人生を捧げていました。内気な性格もあり、家があるニューヨークの郊外からあまり出ることもなかった彼は、独学したアートを制作するようになり、アッサンブラーシュ(既製品や廃品を集めて制作された作品・またはその手法)の先駆者となります。

「箱の芸術家」ジョゼフ・コーネル

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出典:http://nagoyayw.exblog.jp/

「箱のアーティスト」として知られている、ジョゼフ・コーネル。エルンストやダリなどのシュルレアリスム芸術に影響を受け、自らコラージュなどを製作するようになります。現在では、既製品を組み合わせて立体作品を作る、“アッサンブラーシュ”と呼ばれるこの手法ですが、ジョゼフの時代には芸術作品としては扱われていませんでした。そのため、彼の作品が評価を得ていくのは、晩年になってからとなります。アメリカでは、抽象表現主義やポップ・アートが全盛の時期に、ジョゼフは「箱」という小さな空間で、詩的で私的な世界観を表現していきました。

星、鳥、音楽などあらゆるものをモチーフに

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出典:http://blog.goo.ne.jp/

ほとんど外に出るのを好まなかったジョゼフですが、芸術的な好奇心は多岐に渡っており、生き物や宇宙、身の回りにあるものすべてを作品のモチーフとして使っています。前面がガラス板で閉じられたシンプルな箱の中に、コレクションしてきた膨大な数の写真や骨董、天体図、古切手や古地図、本の1ページ、海岸で拾ってきた貝殻などを入れて構成しています。小さな箱に、内気な自身を投影させたかのような、独自の世界観を詰め込んだ彼の作品は、どのアーティストとも一線を画したものとなっています。

日本を代表する前衛芸術家・草間彌生との関係

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出典:http://www.tate.org.uk/

1962年、グループ展で自分の作品の隣に草間彌生さんの作品が並べられたことで興味を抱き、画商の友人に頼み紹介してもらったところから交友が始まったといいます。着物姿の小柄で可愛らしい日本女性を一目で気に入ったジョゼフは、翌日から草間さんの郵便箱があふれるほどの詩を贈りました。そのうちに、1日に何度も電話をするようになり、時には5時間以上も話すことがあったといいます。お互いをモデルにして絵を描いたり、ジョゼフが草間さんに作品を贈ったり、恋人と噂されるほどの親密な関係を築きました。

ジョゼフ・コーネルが草間彌生に宛てたポートレート

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出典:https://jp.pinterest.com/

絵画とも写真とも違う、ジョゼフ・コーネルが生み出し、彼だけが表現できた世界観。彼の作品は、私達の心をどこかノスタルジックにさせます。その世界観をのぞいてみて、彼が導いてくれた自分の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。