3.11以前の南三陸を撮影したドキュメンタリー映画から、伝わってくるもの

レコメンド

2008年3月から3.11まで、南三陸の小さな漁村「波伝谷」の日常を撮り続けた若者がいた。彼のドキュメンタリー映画から伝わってくるものとは。

東北の小さな集落「波伝谷」、人々の暮らしをカメラに

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宮城県南三陸町にある海に面した集落、波伝谷(はでんや)。
東北学院大学の学生だった我妻和樹監督は、専攻していた民俗学を通してこの小さな集落の文化と出会いました。
土地とともに生きる人びとの暮らしを撮りたい。
2008年3年間の民族調査を終えて大学を卒業した我妻監督の、初作品の撮影が始まります。

「いい映像ば、残してけろでば」

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漁に出て、畑を耕し、祭りの獅子舞には若者から老人までみんなが集う。
時の流れにつれて少しずつ変わっていく小さな共同体の光と影。
支えあって暮らす人びとの自然な表情を、画面は穏やかに伝えます。

「全面協力でがんばっから、いい映像ば、残してけろでば」

日々の生活に密着しながら、カメラはまわり続けました。
2011年3月11日、その日まで。

民族調査3年、撮影3年、編集3年で映画は完成

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「被災地」と呼ばれるようになる前の、小さなコミュニティーの日常を追ったこのドキュメンタリー作品は、それからさらに3年の月日をかけて完成しました。
2014年のぴあフィルムフェスティバルでは日本映画ペンクラブ賞を受賞しています。

あたりまえにそこにあるものの大切さ

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震災によって失われた”あたりまえにそこにあった生活”を、スクリーンの中に残す『波伝谷に生きる人びと』。
自分たちが暮らす社会や身近な人とのつながり、なにげなく過ごしている毎日の大切さを、あらためて感じることのできる作品です。

『波伝谷に生きる人びと』(2014年/134分/カラー)
監督・撮影・編集:我妻和樹
(C) 2014 ピーストゥリー・プロダクツ