『ハート・ロッカー』で、女性として史上初のアカデミー賞監督賞を受賞したキャサリン・ビグロー監督。女流監督ながら、骨太なアクション描写を得意としている彼女が監督している、おすすめ作品をご紹介します。
ビグロー監督初期の傑作作品『ハートブルー』
カリフォルニアのベニスビーチ周辺で続発する銀行強盗事件。その手口から犯人一味はサーファーではないかと推測したFBIは、新人エリート捜査官・ユタをサーファーグループに潜入させます。ユタは、サーファーから一目置かれているボディや、美人サーファーのタイラーらと知り合い、次第に仲を深めていきますが…。
サスペンスと複雑な男の友情、そしてサーフィンの魅力がうまく溶け合った作品です。主演のキアヌ・リーブスの美形っぷりとパトリック・スウェイジのかっこ良さに目を奪われますが、陸に海に空にとクオリティの高いアクションシーンにも痺れること間違いなしですよ!
実際の事故を元に映画化『K-19』
米ソ冷戦下の1961年、ソ連の原子力潜水艦K-19の航行実験の艦長に任命されるボストリコフ。副艦長には経験豊富なボレーニンが就き出航します。2人は相反しながらも、困難なテストを成功させていきます。しかしその直後、放射能漏洩事故が勃発。ボストリコフや乗組員は、危機的状況を乗り越えるべく奮闘しますが…。
閉ざされた空間での危機的状況、さらに国を背負った立場であることなど、まさに手に汗握る展開で、自分までクルーの1人になったような気持ちになります。核の事故の恐ろしさが丁寧に描かれているというところでも、見る価値のある作品です。
アカデミー賞監督賞を受賞した『ハート・ロッカー』
2004年の夏、イラク・バグダッド郊外。アメリカ軍爆発物処理班・ブラボー中隊では、任務中に殉職者が出たため、ウィリアム・ジェームズ二等軍曹を新リーダーとして迎え入れることに。これまでに870以上の爆発物を解体処理しているジェームズ。彼の死への恐怖がないかのような行動に、部下らは戸惑いを抱くようになり…。
ドラマチックに盛り上げたりせず、ドキュメンタリーのように描かれています。リアルな描写のため、いつ爆発するかわからない爆弾処理の緊張感が胸が痛くなるほど伝わってきます。兵士たちの抱える複雑な心理を丁寧に描いた監督の手腕は見事で、ただの戦争映画ではなく、社会派映画に昇華させています。
ビンラディン暗殺を描いた『ゼロ・ダーク・サーティ』
https://youtu.be/_8VwRPx2hg4
ビンラディンの行方の追跡に、巨額の予算をつぎ込みながらも、的確な情報を得られずにいたCIAの捜索チーム。そこへ、情報収集と分析能力を誇るCIAアナリストのマヤが、まだ20代半ばながら抜擢されます。しかし、捜査は一向に進展せず、その間にもアルカイダのテロにより多くの命が失われていきます。そんな中、捜索チームの同僚が自爆テロの犠牲となって命を落としてしまい…。
ビンラディン殺害までのCIAの長きに渡る闘いと奮闘、1人の女性の執念が描かれています。間違いなく、私達が生きてきた時代に、歴史に刻まれる出来事が行われていたという事実として見る価値のある作品です。
大胆な演出や力強いアクションを特徴としていながらも、人間が抱える葛藤や虚脱感といった心理描写まで、巧みにあぶり出す作家性の高さも持ち合わせているビグロー監督。だからこそ、彼女が作品で訴えかけてくる物語は、観客の胸を打ちます。ビグロー監督の次回作が待ち遠しいですね。
『ハートブルー』
© 2006 by Paramount Pictures.
『ハート・ロッカー』
©2008 Hurt Locker, LLC. All Rights Reserved.
『ゼロ・ダーク・サーティ』
PG12
©2012 CTMG. All rights reserved