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新井浩文「犯罪者を演じるときは…」『葛城事件』新井浩文さん&若葉竜也さんインタビュー

無差別殺傷事件の背景にある闇を炙り出す、壮絶な家族の物語『葛城事件』(6月18日より公開)の中で、兄弟役を演じた新井浩文さんと若葉竜也さんにインタビューしてきました。
目をそむけたくなるような衝撃作の撮影現場は、どんな感じだったのでしょうか。

(左)兄・保役の新井浩文 (右)弟・稔役の若葉竜也

(左)兄・保役の新井浩文 (右)弟・稔役の若葉竜也

Q:撮影期間はどのくらいでしたか?

若葉さん:1か月半くらいじゃないかと思います。

新井さん:じゃあ、みんな大体一緒だ、たぶん。

若葉さん:オールアップは、僕と田中麗奈さん2人でした。

新井さん:先に撮影が終わってたので、最終日は撮影現場にはいませんでした。前作でオールアップの日に赤堀さんが泣いていたので、今回もたぶん泣いちゃうんじゃないかなって思ってたんですけど…、それが確認できなくて残念でしたね(笑)。

Q:確認してないけど、本当は泣いたかもしれないですか?

新井さん:絶対泣いてますよ(笑)

若葉さん:(笑)

Q:壮絶な物語ですが、現場の雰囲気は?

若葉さん:僕は毎日緊張していて…。徐々に「あ、そうだ、そうだ」と思いながら演じているという感じでした。撮影現場には殺伐とした空気はなく、みなさん話しかけくれて気持ちが和らぎました。

新井さん:うちは全然しんどいとも思ってもないし、台本の時点で「笑い」でしたねえ。
舞台版にも出演していたというのも大きいですけど、赤堀さんの書く本って、どうしてもツボに入って笑っちゃうんですよ。赤堀さんという人を知っているからかもしれないんですけど、なんか情けなくて、だらしないんだけど憎めないお父さん。空気も読めないし…。そういう人を書かせると赤堀さんはとっても上手だから、本の時点で「へへへ」って笑っていました。現場でも、吹き出すのを何回も押さえてて、試写でも爆笑していました。

Q:若葉さんはオーディションからの参加でしたね。

陰のある役からアクの強い役まで作品によって180度違った表情を見せる若葉竜也

陰のある役からアクの強い役まで、180度違った表情を見せる若葉竜也さん

若葉さん:「葛城事件」が舞台でやっていたときに、見ようと劇場に行ったのですが、長蛇の列で…結局チケットが買えず見れなかったんです。
赤堀さんの舞台にいつか出演したと思っていたので、マネージャーとご飯を食べているときに、「オーディションあるから」と言われた時からすでに緊張していました。これは絶対とりたい!と思って、新井くんにすぐ電話して、「葛城事件のオーディション行きますって」言ったら、「誰もいなかったらうちがやるから」って言われて…(笑)。なんか「くそ」って思って、絶対にやりたいと頑張ってとりました。」

Q:新井さんは、舞台では弟・稔、映画では兄・保役を演じましたが。

新井さん:スケジュール開けてはいたんですけど、本当にやるのかやらないのか、ギリギリまでわからなくて。
まず友和さん決まらないと、キャスティングが決まらない訳です。主演が決まらないとほかの人のキャスティングができない。仮に、友和さんじゃない人がお父さんだったとき、友和さんより若めの俳優さんだったら、年齢的にうちは次男ムリなんです。説得力がなくなってしまうので。友和さんだと、兄貴の年齢をもう少し上げれば、うちが次男やっても説得力あるんです。
赤堀さんと、オーディションしていい人いたらそれはそれでいいし、だめだったらうちがやるからねって言ってて。赤堀さんもそれがいいねって話していました。

本当は俳優部がいくことじゃないんですけど、2日目のオーディションを見させてもらいました。バランスとかも見れたらいいなと思って。知っている俳優もいっぱい来ていました。前日の若葉くんのVTRを見せてもらったら、みんな「若葉くんじゃない?いいじゃん、これで決まりじゃん」と満場一致で決まりました。

若葉さん:何回も聞いたけど、新井くんの口から改めて聞くと、うれしいですね(笑)。

Q:赤堀監督の演技指導は厳しかったみたいですね。

若葉さん:厳しいというか、「それは稔の生理じゃないよね。」とか、「それは若葉くんの生理」だよねとか、「まだ頭で考えているよね」とか言われましたね。
何が正解なのか、毎カットわからなくなってしまうこともありましたけど、絶対くらいついていこうと決意して演じていました。最後まで100%役をつかんだ!みたいな感じはなかったです。

新井さん:たぶんね、赤堀さんもわかってないと思う。イメージが凝り固まっている人ではないので、現場でいろいろみて、「それだ、面白いな」って言うのを取り入れる人なので。

若葉さん:たしかに。拘置所シーンのとき、まずOKが出るじゃないですか。で、今後は別のアングルで撮るという時に、OKでたのと前のテイクと違いすぎてリテイクとかもありました(笑)。

新井さん:だからわかってないんですよ、赤堀さん(笑)。

Q:新井さんへの演技指導は?

見ない日はないのでは?というほど出演作多数の新井浩文さん

テレビ・CM・映画にひっぱりだこの新井浩文さん

新井さん:演技指導?うちにはなかったですね(笑)。
うちにとって、赤堀さんは遊び相手として一生遊んでいくうちの一人なので、普段仲がいいというのもあって、阿吽の呼吸というかツーカーの仲だし、赤堀さんのやりたいことははっきり言ってわかる。だからとってもやりやすい相手というか、面白いんです。

Q:三浦友和さん演じるお父さんは、嫌な感じの人でしたね。

主人公の父親・清役の三浦友和さん

主人公の父親・清役の三浦友和さん

新井さん:朝ピザ食べるシーンがあったじゃないですか。「朝からピザ?」って言って、なんだかんだ言う間に、「そのネクタイいいなって」っていうと、うち笑いになっちゃう。「そのネクタイいいなって」何それって(笑)。
友和さんもすごいんです。笑わせようと思っていないのに面白いんですもん。

Q:撮影現場での三浦さんとの会話は?

若葉さん:僕は、ほとんどしゃべっていなくて。1日だけかな?稔がごみを捨てに行くシーンのときに、「どこ住んでいるの?」みたいな話をしてくださいました。

新井さん:友和さんもそんな話すほうじゃないので、本当に他愛のない日常の会話をしていました。「このご飯どうだったとか」「この間映画何見た?」とかそんな会話ですね。
実はうちも若葉くんも、お互い友和さんの息子役を演じたことがあるんです。

若葉さん:僕は5・6年前ですね。

新井さん:うちはもっと前。『松ヶ根乱射事件』の時で、親子としてはそれ以来です。その間、年に数回ごはんに誘っていただいています。大好きで、尊敬している先輩ですね。

Q:赤堀監督はどんな人ですか?

新井さん:インタビューのとき、難しそうに話していますけど、何も考えてないですから(笑)監督風にしていますけどね(笑)。演出も「もう1回」って言わないといけないんじゃないか。って思っているタイプだと思います。本当はOKなんだけど。あと欲と、本当はOKなんですけど念のための保険(笑)。

Q:赤堀監督の魅力は?

新井さん:赤堀さんって、日常の会話を書くのがものすごいうまいんです。「~だぜ」とか「きさま」とか、普段言わないようなセリフが書いてある台本って笑えないんですよね。じゃあ、何が面白いかというと、素が面白いんです。間とかかすごい面白いんですよ、赤堀さん。
山下監督も、とても近いところがあるんですけど、この両監督は、噛んでもOKだします。面白かったらOK。要は、今の噛み方が自然な人間の噛み方かどうかが重要なんですよね。

Q:稔という役については?

新井さん:稔の設定は、舞台版と設定が全然違うんですよ。犯罪者を演じるときに、何の共感性もないですね。映画だから、仕事だからやっている。自分がそう思ってるから、ここが納得できるとかもないですね。

若葉さん:全く理解できないことが多すぎて…。
ただ、家族でご飯食べているシーンで「最後に何食べたい」って聞かれて何とか答えようとする気持ちとか、聞かれているから「何か言わなきゃ」っていう気持ちとかはわかる気はします。

新井さん:この仕事やってからですけど、本当に不謹慎ですけど、大きい事件は映画になりやすいじゃないですか。今はそういう目線で見ているから、何か事件が起きると「なにこれ?」「なんでだろう」という目線で見てしまいます。

Q:撮影期間中、暗い気持ちになりませんでしたか?

新井さん:メンタル引っ張られる俳優ってダメだと思います。
そもそも振りだと思うんです。インタビューで、「役にのめりこんじゃいました」って。「役が抜けません」って。
でも人を殺す役のとき、絶対殺さないといけないですからね、そういう人は。死ぬ役のとき、死なないといけないし、薬物中毒者の役のときには、薬物中毒にならないといけない。でもそれはできない。常識の線引きで、どこかで作り物やっているわけだから、その線引きはしないといけないと。本当にダメだと思うんです。だって、実際に人は殺さないし、銃打たないし、刺さないし、刺されたこともないし。
「今回役に入り込んじゃって、抜くのが大変でした」って言うのはとってもかっこいいかもしれないけど、うちはそういうのを見ると、「え?」ってなりますね。うちは言ったことも、入ったこともないです。仕事ですから。こういうことをやって、飯食っている仕事ですから。線引きはしないと、プロとして失格だと思います。だからメンタルが壊れようがない。でも弱い人はたくさんいるから、そういう人がいてもいいとは思いますけどね。
今回に関しては、うちはなかったですね。若葉君は?

若葉さん:僕も暗くなったりしませんでした。でも打ち上げのときに、顔つきが晴れやかになったねって言われました(笑)。

新井さん:それはあるよね。プレッシャーとか緊張で、終わるとわー!うれしいって。やっぱり酒飲みたくなるし。若葉くんとは酒癖悪いから飲まないけどね(笑)。

若葉さん:(笑)

観る者の心を鋭く抉る濃密な人間ドラマ『葛城事件』とは?

葛城清(三浦友和)は、自分にはつりあわない妻を得て、子宝にも恵まれる。がむしゃらに働いてマイホームを建て、思い描いた理想の家族が完成したはずだった。
しかし理想に拘り続けた結果、家族とすれ違い孤独を増していく清。その孤独感はさらに家族へと向かい次第に歯車が狂いだす―。
長男・保(新井浩文)は会社をリストラされ誰にも言い出せずに追い詰められていく。次男・稔(若葉竜也)は無差別殺人事件を起こし8人を殺傷した罪で死刑囚となる。
妻・伸子(南果歩)は次第に精神のバランスを崩し廃人のようになっていく。さらに死刑制度反対の立場から稔と獄中結婚する女・星野(田中麗奈)も現れるが…。

『葛城事件』(PG12)
6/18(土)新宿バルト9他全国ロードショー
© 2016「葛城事件」製作委員会

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