【名作プレイバック】CHARA×浅野忠信W主演!岩井俊二監督の映画『PiCNiC』を改めて解説

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出典:http://www.tasteofcinema.com/

独特の映像美と繊細な心の描写で、多くの作品をこの世に送り出している、岩井俊二監督。初期の作品である『PiCNiC』では、ミュージシャンとしても有名なCHARAと、ハリウッドにも進出している浅野忠信が共演しています。
不思議な世界観を持つこの作品を紹介しましょう。

68分に凝縮された美しさと残酷さ『PiCNiC』

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カラスの羽をまとっているココ(CHARA)は、双子の妹を殺してしまい施設に入れられます。そこで出会ったツムジ(浅野忠信)は読書に夢中の青年。そしてココに思いを寄せる無邪気なサトル(橋爪浩一)。塀の向こうの世界には行くことはできないものの、塀の上を渡り歩くなら塀から出たことにはならない、という勝手な解釈でツムジとココは次々と塀を伝って歩きます。そして辿りついた教会で聖書をもらったツムジは地球滅亡を予言し、今度はサトルも加えた3人で滅亡の瞬間を見るために塀の上の探検が始まります。

1994年に製作された映画です。翌年公開予定でしたが、様々な事件の影響があり1996年に再編集の上、公開されました。ベルリン映画祭ではベルリン新聞記者会賞を受賞しました。

見る者の期待が恐怖に変わっていく独特の世界

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出典:http://cinema.sugai-dinos.jp/

オープニングから、絶望的な雰囲気と音楽。顔に張り付いたような笑みを浮かべる施設のスタッフたちと、無表情な入所者たちが恐怖を感じさせます。ツムジの幻影として現れる先生も、人間離れした様相が不気味。

再編集される前には、最初に塀を歩いたツムジとココが施設のスタッフたちに拘束されて罰を与えられるシーンがありました。しかし、残酷すぎるということでカットされ公開となりました。

どこまでも歩き、施設から捜索願が出されて警官に呼び止められます。しかし拳銃を奪って、歩き続ける3人。何かと道草をくうサトルは遅れをとり、塀から落ちてしまいひとりきりで息を引き取ってしまいます。
そんなことは知らず、埠頭に着いたツムジは自分が殺した先生の幻影に苦しんでいました。そこへココは追いつき、ふたりは地球を滅ぼせば自分たちも救われると思い、太陽に向けて銃を撃ちます。何も起こらないことに絶望を隠せないツムジ。そんなツムジの姿を見てココが取った行動とは―。

若かりし頃の浅野忠信もセクシーでかっこいい!

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出典:http://topicks.jp/

拭い去ることのできない気持ちを胸に抱える青年・ツムジを演じた浅野忠信さん。
今でこそダンディな雰囲気もありますが、『PiCNiC』ではまだ少年っぽさを残したような繊細さもあり素敵です。
この映画をきっかけにCHARAと結婚したことは有名です。

不思議な魅力を醸し出しているCHARAはとってもキュート!

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出典:http://mocatina.cocolog-nifty.com/

ハスキーでちょっと舌足らずな話し方は、彼女の歌の雰囲気を残したまま、CHARAならではの世界観を出したココを演じています。
教会で子供たちの讃美歌に合わせて口ずさむシーンなどでは、アーティストとしての彼女も垣間見ることができます。

サトル役の橋爪浩一さんは、1999年にバイク事故で急逝されました。生きていらっしゃったら、味のある俳優として日本の映画界を盛り上げていてくれたに違いありません。

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出典:http://www.last.fm/

劇中に流れる美しいピアノの旋律とは裏腹な残酷な結末に、救いようのない後味の悪さが残りますが、聖書を取り入れたエピソードや世界の終りなど、哲学的な美しさもある作品です。
異国のような施設や教会、黒い衣装のココと白い衣装のツムジとサトルといった対照的な主役たち。そんな映像の面白さを感じながら見るのもいいかもしれません。