チャップリンだけではない、サイレント映画の名作

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役者の台詞もなく、音響もない、サイレント映画を観たことがあるでしょうか?有名なチャップリンの作品は観たことがあるという方も多いかもしれません。今回は、サイレント映画に興味を持っていただけるように、チャップリン以外の名作をご紹介します。

“動く写真”を映画に進化させたサイレント映画

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まず、サイレント映画とはどのようなものかご存知でしょうか?昔、映画は“動く写真”であり、音声や音響、俳優の語る台詞などを付ける技術がなく、1927年まで世界初のトーキー映画が出来るまで、無声映画=サイレント映画が映画でした。映画館内で音楽を流したりすることなどはあったようですが、この時代、映画からわかる情報は視覚が全てでした。視覚だけで、物語や登場人物の心情をどう伝えればいいのか…映画を作る者たちは、観客に楽しんでもらうために、常に考え突き詰めて製作していったことで、サイレント映画は芸術作品として進化していくことが出来たのだと思います。

サイレントにこだわったチャップリン

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山高帽にダボダボのズボン、ステッキを持ち、ちょび髭を生やした風貌――誰もが思い浮かべるのが、世界一有名な喜劇王で、サイレント映画の王、チャールズ・チャップリンです。チャップリンの作品のなかには、サイレント映画として観客に“見られる”ことを意識し尽くして作った傑作『チャップリンの黄金狂時代』という作品があります。靴を食べる有名なシーンや、後のコントの原型になったともいえるシーンが数多くあり、計算された動きの表現が素晴らしく、そんなことを考えられないくらいに笑えます。社会風刺と喜劇のバランスの天才であり、彼が生み出したサイレント映画の名作は数え切れないほどあります。

フランス発のアカデミー賞作品賞受賞の『アーティスト』

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1927年のハリウッド。サイレント映画界のスターとして君臨しているジョージ・ヴァレンティンは、彼に憧れる女優の卵ぺピーと出会い、彼女にアドバイスをおくります。しかし、映画産業はサイレントから台詞のあるトーキーへと大きく移行していき、ぺピーは人気女優へと駆け上がっていきます。対照的に、サイレントにこだわるジョージはスターの座から転落していき…。
2011年と最近の作品ですが、サイレント映画らしいノスタルジーを感じさせる物語です。ジョージのジェケットに身を包むぺピーのシーンは、台詞がなくても切なさが伝わり、タップダンスのシーンでは2人の呼吸と喜びが伝わってきます。“古き良き時代”を描いた、映画を愛する人なら好きになること間違いなしの作品です。

後世の映画に多大な影響を与えた『カリガリ博士』

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2人の男が話している横を、あてどもなく歩く女がいます。男は、女性は自分のフィアンセであると言い、もう1人の男に、自分たちの奇妙な体験について語り始め――。 
北ドイツ。カリガリ博士は眠り男ツェザーレにの予言を看板にして、お客の運命を占う見世物を始めます。予言の通りに、人が次々に死んでいくが、実は、博士がツェザーレを使って殺人を行っているのでした。友人アランとともに見世物に訪れたフランシスは、予言通りにアランが殺されたことで、真相を究明しようとしますが…。
引き込まれる冒頭シーンから、次々展開していく物語、斬新な結末、印象に残る美術まで、これぞ映画らしい映画であり、観て引き込まれ、観終わって頭から離れない、なぜか何度でも見たくなってしまうマジックにかかったような作品です。

名女優の悲劇的で可憐な演技が光る『散り行く花』

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仏教を広めるために、ロンドンに渡った中国人の青年チェン・ハン。厳しい現実の前に夢破れ、今はスラム街の商人になっていた彼は、同じスラム街に住む少女ルーシーに恋心を抱いていました。ルーシーは、ボクサーの父親から虐待を受けており、笑うことも知らないような少女でした。2人はチェンがルーシーを助けたことをきっかけに恋に落ちますが、関係がルーシーの父親にバレてしまい…。
サイレント映画時代の名女優、リリアン・ギッシュがヒロインを演じる名作です。ぎこちなく指で口を引っ張り笑顔を作るリリアンのシーンは必見で、彼女を見るために映画を見ても損はないほどの魅力に溢れています。

本当に心で思っていることを表現する時、人は言葉よりも、視線で伝えたり、ふとした表情に出てしまったりするものだと思います。サイレント映画は人の感情の原点であり、だからこそ胸にじわりと伝わるものがあると思います。時間ができたら、まずは1本、静かな表現世界を感じてみてはいかがでしょうか。