『ピアニスト』など、フランスの名女優イザベル・ユペールの演技に酔いしれよう

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フランスの女優・イザベル・ユペール。その演技には定評があり、シリアスからコメディまで幅広くこなしています。決して派手ではありませんが、知的な美しさは年齢を感じさせません。癖のある役が多く、「ユペールにしか演じられない。」と絶賛されたエピソードもあります。カンヌ国際映画祭などの賞を獲得した経歴もある、彼女の略歴を覗いてみましょう。

パリの名門校で学んだ確かな実力を持つユペール


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パリで誕生したイザベル・ユペールは、フランス国立高等演劇学校で演技を学びました。その後、舞台やテレビで活躍し、1972年にスクリーンデビューを果たします。
日本ではNHKの「ルーヴル美術館」のナビゲーターとして出演していました。舞台女優としても高い評価を受けており、華のない役どころでも存在感を見せてくれる演技派として有名です。
そんな、フランス映画界にはなくてはならない存在である彼女の作品をチェックしてみましょう。

落ちて行く主婦の行く末は…『主婦マリーがしたこと』


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ナチ占領下のノルマンディが舞台。夫(フランソワ・クリュゼ)は戦地へと駆り出され、残されたマリー(イザベル・ユペール)とその子供たちは、それなりに平和な毎日を過ごしていました。
ある日、偶然友人の堕胎に手を貸したのをきっかけに、マリーのもとにはこっそり堕胎をしたい女たちが来るようになりました。しかし、当時堕胎は罪に問われる行為だったのです。
それを知りながら、マリーはそれでお金を稼ぐようになり、恋人も作ってしまいます。しかし、突然夫が戻りすべてが知られてしまいました。そしてある時、夫はマリーが法を犯していることを通報してしまうのです。

かつてのノルマンディで、実際にあった出来事をもとにした映画です。
この作品でユペールは、ヴェネチア国際映画祭で、女優賞を受賞しました。

女ふたりの得体のしれない恐ろしさ『沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇』


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とある屋敷に家政婦としてやってきたソフィー(サンドリーヌ・ボネール)。彼女はかつて、父親殺しの疑いをかけられたことのある女性でした。しかし、しっかりとした仕事ぶりに、家主であるジョルジュとカトリーヌ夫妻たちは満足していました。
ソフィーと友人になった女性は、郵便局員のジャンヌ(イザベル・ユペール)。彼女もまた子殺しの噂があったのです。
ある日、ソフィーはひた隠しにしていた自身の障害について知られたことに耐えきれず、問題を起こし解雇されてしまいます。もともと一家を嫌っていたジャンヌはソフィーを受け入れ、ふたりは屋敷に荷物を取りに行くのですが、その時見つけたのは猟銃でした。

コンプレックスを内に秘めてほとんど表情を変えないソフィーとは反対に、ずうずうしく強引なジャンヌを演じたユペール。ヴェネチア国際映画祭、そしてセザール賞でも女優賞を受賞しました。

演技派女優ユペールの代表作『ピアニスト』


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ウィーンの音楽学校でピアノの教師をしているエリカ(イザベル・ユペール)は、アラフォーである彼女の生活にいまだに口を挟んでくる母親と、二人で暮らしています。
ある日、出会った青年ワルター(ブノワ・マジメル)はエリカに好意を寄せますが、エリカはかたくなに拒否します。実は彼女はそれまで一度も男性経験がなく、しかも人には言えない性的趣味を持っていたのでした。そんなことを知らないワルターの強引な誘いに、とうとう自分の秘密を伝えたエリカでしたが…。

第54回カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリ、男優賞、女優賞の3つを受賞しました。
衝撃的なストーリーに好き嫌いが分かれる作品ですが、ユペールの渾身の演技は大変高く評価され彼女の代表作となりました。

悲しく切ない夫婦の愛と非情な現実で胸が痛い『愛、アムール』


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パリに住む老夫婦、ジョルジュ(ジャン=ルイ・トラティニャン)とアンヌ(エマニュエル・リヴァ)は、ともに80歳を超えていますが、毎日を楽しく過ごしていました。ところがある日アンヌが倒れ、その後遺症で半身麻痺になってしまいます。自宅で過ごすことを選んだアンヌと、介護するジョルジュ。そのふたりの決断を見守る娘のエヴァ(イザベル・ユペール)でしたが、アンヌの容態はどんどん悪化していくのでした。

監督のミヒャエル・ハネケは『ピアニスト』でも知られ、ユペールとはこれが3作目となります。そしてこの『愛、アムール』は第65回カンヌ国際映画祭で、最高賞パルムドールを獲得しました。また、第85回アカデミー賞では外国映画賞を受賞し、他にも世界各国の多くの映画祭などで称賛されました。

パリを散歩した気分になれる大人のラブストーリー『間奏曲はパリで』

夫と共に畜産業を営んでいるブリジッド(イザベル・ユペール)は、何の問題もなく安定した毎日を過ごしています。夫は優しく、子供たちは勉強のため違う土地で頑張っています。しかし、ブリジッドはそんな日常から逃れたいと思っていました。
そしてある日、隣家でのパーティーでスタン(ピオ・マルマイ)という魅力的な男性と出会ったことが、ブリジットの背中を押したのです。パリという都会へ行けば何かがあるかもしれない。そう思った彼女は、夫に嘘をつき一人パリへと向かうのでした。

子供の手が離れ倦怠期を迎えた夫婦を描き、日本では2014年のフランス映画祭で上映されました。その後、2015年に劇場公開されています。
平和な日々の中でもほんの少し刺激があれば、と夢を見るかわいらしい女性をユペールが好演しています。


出典:http://lci.tf1.fr/

長きに渡り、フランス映画界を牽引し続けてきたイザベル・ユペール。
その懐の深い演技を、ゆっくりと堪能してみてはいかがでしょうか。

『間奏曲はパリで』
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