CinemaGene(シネマジーン)

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極彩色!カラフルな映像美が印象的な映画

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出典:http://bar-tsuchi.com/

映画で一番重要なファクターは何でしょうか。ストーリーはもちろん、監督、俳優など様々な意見があると思いますが、最も重要な要素の一つとして、「映像美」があげられると思います。美しい映像は観る者の心に深く刻みこまれ、作品の記憶として残ります。今回は、カラフルな映像美が印象的な映画を、5本を厳選してご紹介します。

50年間全く色褪せない不朽の名作。『シェルブールの雨傘』

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出典:http://s.webry.info/

People carrying a variety of umbrellas in the rain
出典:https://puul.jp/2747
あまりにも有名な、カラフルな傘を持つ人々が行き交うオープニングシーン

50年以上前の1964年の作品ながら、今も色褪せない、映画史に残る不朽の名作です。当時としては画期的な、台詞を一切排除し全編歌で綴られるミュージカル映画で、全編に流れるミシェル・ルグランの主題曲は、今や万人が知るスタンダードナンバーとなっています。
フランスの港町シェルブールで傘屋を営む家庭の娘ジュヌヴィエーヴ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、自動車修理工のギイを心から愛していましたが、ある日彼に召集令状が届き、兵役につくことになります。その後彼女はギイの子供を宿している事に気づき、ギイを待ち続けると心に決めるのですが…。
カトリーヌ・ドヌーヴの出世作として知られる作品ですが、残念ながら歌は全編吹き替えとなっています。それでも彼女の抜きんでた美しさは、世界中に熱狂的ファンを生み、世界的大女優への第一歩を踏み出した作品と言えるでしょう。
製作45周年となった2009年、カラフルな映像を厳密に再現するために、デジタルリマスター版を製作し、日本で最初に公開された事が大きな話題となりました。特に、オープニングでカラフルな傘を差す人々が行き交うシーンはあまりにも有名で、バックに流れるルグランの主題歌と相まって、いきなりこの作品の世界にぐいっと引き込まれます。このシーンは作品を象徴しているとも言われ、人それぞれの人生に”色”があり、ほんの近くを通りながら気づかずすれ違っていく…そんな人生の出会いと別れを表現している素晴らしいシーンと言えるでしょう。

大女優カトリーヌ・ドヌーヴ。今なお凛とした美しさは健在です。

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72歳となった今でも、たまに元気なお姿を拝見するカトリーヌ・ドヌーヴですが、2007年のアカデミー賞授賞式では、渡辺謙とともに、非英語圏俳優の代表として外国映画賞を紹介しました。この場面は、日本人として誇らしい気持ちを持った方も多かったのではないでしょうか。
また、2010年には東京国際映画祭に出席するため来日を果たし、「徹子の部屋」にも出演するなど、精力的に活動。今も変わらぬ凛とした美しい姿を見せてくれました。

驚愕の90分ワンカット撮影!『エルミタージュ幻想』

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出典:http://www.fashion-press.net/
100人を超える舞踏会シーン。もちろんこれもワンカット撮影の一環です。

ロシア・サンクトペテルブルクにある世界遺産、エルミタージュ美術館を舞台に、想像を絶する全編90分ワンカットで撮影された奇跡の作品です。
撮影方法だけではなく、ストーリーも奇抜で、この作品の監督、アレクサンドル・ソクーロフ自身が、突然エルミタージュ美術館に迷い込み、そこには19世紀のフランス外交官が現れます。そして彼の案内で、展示物の歴史と共に過去と現在を彷徨うというタイムトラベルストーリーとなっています。
館内には、ダヴィンチ・ルノワール・セザンヌ・ゴッホなど、数限りない歴史的名作が展示されていますので、映像が美しい事は言うまでもありませんが、やはり特筆すべきは、よくぞこの作品を90分ワンカットで撮影できたなという事でしょう。何よりエルミタージュで映画ロケができた事がまず奇跡。そして本番一日という条件をクリアする為の苦肉の策だったとはいえ、事前に綿密な打合せを繰り返し、奇想天外なワンカット撮影を実行に移した監督・スタッフには拍手を送りたい。しかも技術的な問題で3回中断し、4回目に見事成功したとか。彼らの粘り強さと執念には感服するほかないですね。
映画好きの方ならば、ストーリー云々関係なく、間違いなく映画史に残るであろうこの作品は、絶対見ておくべきです。監督の案内で、時間旅行を楽しんでみてはいかがでしょうか?
嬉しいことに、DVD特典として撮影技術をドキュメンタリー化した映像が収録されています。併せて見ればさらに面白さ倍増間違いなしです。

『さくらん』

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『さくらん』の一場面。蜷川監督ならではの極彩色の映像美がさく裂します。

「ハッピーマニア」などの大ヒットで知られる人気漫画家、安野モヨコの同名コミックを、世界的フォトグラファー・蜷川実花が映画化した作品。
8歳から吉原の遊郭で働き、何度も脱走を試みるが失敗を繰り返す少女・きよ葉。周囲の人の優しさに救われ、ライバルとの軋轢に苦しみ、様々な経験を重ねながら、やがて吉原随一の花魁(おいらん)の座をつかんだ彼女の、凛とした生き様を描きます。
これが初監督となる蜷川実花ですが、フォトグラファーとしてのこだわりを存分に発揮し、彼女ならではの極彩色でカラフルな映像美が満載の美しい作品となっています。彼女自身、多くのライバル達がいる中、大きな成功をつかんだ女性として、花魁・きよ葉の人生を撮り終え、「以前は、”強い女性は何があっても強い”と思っていたのが、”女性は誰でも弱い部分が絶対あり、それを認める事で、そこからもっと強くなれる”と考えが変わった」と語っています。
初めて監督を経験し、大きな壁にぶつかった時、「自身の弱さ」に驚きを感じながらも、しっかりと向き合い、乗り越えて完成した本作。今を生き抜く様々な女性達に勇気を与える作品と言えるでしょう。

ミュージシャンにも信頼が厚い蜷川実花。

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出典:http://www.musicman-net.com/
蜷川が撮影した、三代目J Soul Brothersの2012年発売シングルジャケット

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AKB48「ヘビーローテーション」MVより

蜷川実花は、写真集・映画だけでなく、ミュージシャンのMV(ミュージックビデオ)の監督などももよく依頼されています。ここでも彼女のポリシーは不変で、作品はあくまでカラフル。三代目J Soul Brothersのジャケット・MVをはじめ、AKB48「ヘビーローテーション」、ゆず、Flowerなど、多数のミュージシャンのジャケットやMVを担当、どの作品も高い評価を得ています。

巨匠、ヴィスコンティが描く、”狂王”の没落劇。『ルートヴィヒ』

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イタリアの巨匠、ルキノ・ヴィスコンティ監督の「ドイツ三部作」のラストを飾る作品として1972年に制作されました。彼独特の幻想的かつカラフルで美しい映像は、さながら舞台劇を見ているようで、当時の貴族社会の豪華絢爛さをリアルに表現するため、実際にルートヴィヒ2世が建設したリンダ―ホーフ城などでも撮影が行われ、インテリア・宝石・装飾品まで全て本物を使用。エキストラまでも本物の貴族を使うほどの徹底ぶりでした。
自身が好んだ音楽や建築などの芸術に、”狂気”とも言えるほどの金銭をつぎこむ破滅的性格から「狂王」とも呼ばれたルートヴィヒ2世。彼が18歳で即位し、40歳で謎の死を遂げるまでの波乱に満ちた生涯を、史実に沿って描いた超大作ですが、日本公開は制作から8年後。しかも大幅にカットされた短縮版で上映されました。1989年、当時のスタッフが、没になったフィルムネガを買い取り、ヴィスコンティが制作時に意図した形で再編集を行い、「復元完全版」(上映時間4時間)として特別上映されました。

ヴィスコンティ「ドイツ三部作」とは。

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出典:http://e-tsurezure.blog.so-net.ne.jp/
『地獄に堕ちた勇者ども』より

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『ベニスに死す』より

1960年『山猫』でカンヌ映画祭パルムドールを受賞した巨匠ヴィスコンティ。彼が晩年、貴族・芸術家の没落を描いた作品を多く発表していきます。それが「ドイツ三部作」を言われる作品です。先にご紹介した『ルートヴィヒ』ではバイエルン王の没落を、『地獄に堕ちた勇者ども』では、ナチス・ドイツ全盛時のドイツの製鉄王一族の凋落を、そして『ベニスに死す』では、偶然出会った同性の少年に心惹かれ、破滅の道を歩む老作曲家を描いています。
それぞれ対象は違えど、全て当時のドイツの退廃的状況を描いた作品で、どれもが素晴らしい作品です。『ルートヴィヒ』と併せて「ドイツ三部作」を是非コンプリートしてみましょう。

日本映画の至宝・黒澤明が描いた映像美の世界。『夢』

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「桃畑」の一場面

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最後に日本を代表する巨匠、黒澤明監督の作品をご紹介します。彼が実際に見た「夢」をモチーフに、8本の短編オムニバスとして映像化した作品。写真の広告ポスターにも名前がある通り、黒澤監督を師と仰ぐスティーヴン・スピルバーグとジョージ・ルーカスが製作協力した事が大きな話題になりました。黒澤作品としては異色とも言える作品ですが、「映像美」にフォーカスした場合、この作品は筆頭格と言えるでしょう。
8つの作品すべてに、黒澤の大自然に対する畏敬の念が込められ、ただ美しいだけではなく、彼自身の強烈なメッセージが伝わってきます。
特に注目すべき作品は「赤富士」でしょう。原子炉が爆発し、富士山が炎に包まれて人々が逃げ惑う映像が衝撃的で、後に起こる東日本大震災による福島原発事故を予言したものではないか?と様々なメディアで取り上げられました。黒澤自身、日本における原発の危険性については強い懸念を示していただけに、彼なりの手法で未来の危機を示した作品と言えるのではないでしょうか。

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