【シネマジーンの映画ノート】『世界でいちばん長い写真』レビュー

レコメンド

6月23日(土)に公開を迎えた、誉田哲也さんの同名小説が原作の映画『世界でいちばん長い写真』。愛知県の学校で実際にあった出来事をもとに描かれた本作は、何事にも消極的で、人生に対して目的を持てないでいた主人公・宏伸(高杉真宙)がパノラマカメラとの出会いをきっかけに変わっていく物語。そんな本作の魅力をたっぷりご紹介します!

“普通”だからリアル

本作の特徴は、何と言っても“普通”であること。大事件が起こるわけでもなく、現実からかけ離れた設定でもない。実際の出来事をもとに描かれていることもありますが、全編を通してとても親近感が湧く内容で、“もしかしたら自分にもこんなことがあったかも”“こういう気持ち分かる”と共感ポイントが満載なんです!

宏伸とパノラマカメラとの出会いのように、何かに夢中になるきっかけは意外とひょんなことかもしれません。学生時代は特に習い事や部活を通して、スポーツや新しい趣味に出会うことも多いはず。かっこよさそうだから、楽しそうだから、そんな理由で始めたことに、気がつけばのめり込んでいたなんて経験がある方も多いのではないでしょうか?

私は小学生のころにちょっとした憧れでダンスを始めました。最初はもちろんうまくできないことばかりで、悔しくて泣くことも多かったです。でも、少しずつできるようになっていく感覚や新しい発見が楽しかったし、先生に褒めてもらえるとものすごく嬉しくて。そうして気づけば6年の月日が経っていました。学業との両立から高校では一度ダンスを辞めてしまったのですが、“やっぱり続けていれば…”と後悔し、大学でもう一度ダンスを再開。少しの憧れが、いつの間にか私の人生を語るうえで欠かせないくらい大きな存在になっていたんです。

本作を観て、そんな自分の青春を思い返しました。パノラマカメラで撮りたい景色を探し、街中を自転車で駆け巡る宏伸の姿には、ダンスのことしか頭になかったときの自分が、あることに挑戦し終えたあとの宏伸の晴々とした表情には、満足のいくパフォーマンスができたステージ上の自分が重なりました。年齢も性別も、置かれている状況も、熱中していることも違うのに、まるで自分のことかのように感じる。その不思議な懐かしさに思わず胸がぎゅっとなりました。