これ知ってる?『風の谷のナウシカ』にまつわる逸話

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最上のバブみ?ナウシカの胸に込められた想い

本作のヒロイン、ナウシカは小さな辺境諸国「風の谷」の族長の娘で、メーヴェと呼ばれるハングライダーを自在に乗りこなす風使いです。そして腐海の蟲たちをも愛する、命を慈しむ優しい心を持ち、リーダーシップにも優れ、谷の人々から愛されています。

その人物像はもちろんのこと、魅力的なルックスもまたナウシカの人気の理由のひとつとなっていると言えるでしょう。活発な彼女によく似合う明るい茶色の短髪に、様々なものごとに好奇心を持つ聡明さを映し出したようなきらきらの瞳、メーヴェを操るしなやかな手足。人々に愛される、快活さと可憐さを体現しているかの如き造形です。特に瞳がきらきらして描かれていることに関しては、「ナウシカ」以前の宮崎監督の作品では見られなかった瞳孔やハイライトの描き込みが施されていることもあり、こだわりが感じられるポイントですよね。

もうひとつ、ナウシカのキャラクターデザインで宮崎監督がこだわった部分だと考えられるのが“胸”です。肌の露出が少ない服装ということもあってあまり目立ちませんが、ナウシカは胸が大きくデザインされているキャラクターなのです。キツネリスのテトを懐に入れるシーンなどではそのことが顕著に感じられるのではないでしょうか。このナウシカの胸について宮崎監督のこだわりが感じられるインタビューの言葉を引用しましょう。

「――でもナウシカという少女は、実に魅力的ですよね。
宮崎 ナウシカの胸は大きいでしょ。
――はい(笑)。
宮崎 あれは自分の子どもに乳を飲ませるだけじゃなくてね、好きな男を抱くためじゃなくてね。あそこにいる城オジやお婆さんたちが死んでいくときにね、抱きとめてあげるためのね、そういう胸なんじゃないかと思ってるんです。だから、でかくなくちゃいけないんですよ。
――ああ……なるほど……(衝撃!)。
宮崎 その、やっぱりね、胸に抱きしめてあげたときにね、なんか、安心して死ねる、そういう胸じゃなきゃいけないと思ってるんですよ。」
(ロマンアルバム「風の谷のナウシカ」 徳間書店 1984年5月17日発行 より)

まさに「なるほど!そうだったのか!」と思えるエピソードですよね。命を慈しむ優しさと強さを兼ね備えるナウシカだからこそ、人々を包み込むふくよかな胸をもつキャラクターとしてデザインされていたんですね。生まれてくる子だけでなく、命を終える者をも受け止めて癒して救うというこのエピソードにも象徴される、あらゆる人々に向けられるナウシカの慈愛は、最上のバブみといえるかもしれません…!