これ知ってる?『風の谷のナウシカ』にまつわる逸話

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巨神兵と庵野秀明、師弟関係のはじまり

『風の谷のナウシカ』に登場する巨神兵を描いたスピンオフの短編映画『巨神兵東京に現わる』(2012年)。この作品を企画した「新世紀エヴァンゲリオン」などの庵野秀明さんと宮崎監督が師弟関係であることを知る人は少なくないかと思います。ここでは、その師弟関係の始まりともいえるエピソードをご紹介します。

人手不足に陥っていた『風の谷のナウシカ』の制作現場に、当時無名の新人だった庵野さんがアニメージュに掲載された作画スタッフの募集告知を見て上京し、原画スタッフとして参加しました。庵野さんが原画を担当したカットはクロトワが成長する巨神兵に話しかけるシーン(カットNo.962~978)と王蟲が疾走するシーン、巨神兵がビームを発射しながら腐って崩れていくシーン(カットNo.1455~1481)です。とてもじゃないですが、新人があの巨神兵の原画を描いたとはにわかに信じがたいことですよね。

そしてメカやエフェクトの作画が得意な一方、人物を描くのが苦手だったという庵野さん。巨神兵のカットで、最初は庵野さんがクシャナの作画も手掛けていたそうですが、宮崎監督から「ヘタ」だと言われOKが出ず、最終的に巨神兵や爆発を庵野さんが描き、宮崎監督が第二原画で人間のキャラクターを描くということになったのだそうです。今考えてみれば、新人が第一原画を担当し、その第二原画をあの宮崎監督が担当する、というのは驚きの構成ですよね。

こうして庵野さんが新人の時に出会ったふたりはその後、互いの作品を批判し合ったり、宮崎監督の作品『風立ちぬ』に庵野さんが主人公役で声の出演をしたり、かねてからナウシカの続編を作る気はないと言っている宮崎監督が庵野さんなら作っても良いと思うようになったと発言したりと、ただ単純に「親しい仲」というだけでは言い表せない、独特の関係性が保たれているようです。