「ピンポン」「鉄コン筋クリート」。漫画好きが支持する漫画家、松本大洋って知ってる?

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漫画好きが熱狂的に支持する漫画家、松本大洋。彼が愛される理由、作品の特徴など、さまざまな魅力をご紹介します。

松本大洋って誰?

松本大洋
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漫画家。1967年、東京都生まれ。1987年「STRAIGHT」が月刊アフタヌーン四季賞(漫画新人賞)で準入選し、同誌増刊号に掲載されたのが漫画家としてのデビュー。以降「鉄コン筋クリート」「ピンポン」などヒット作を連発。
手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞するなど、各方面で高い評価を得ています。まるでポップアートを思わせるような独特な筆致は、他の漫画家とは一線を画し、一目見れば彼の作品とわかるほど特徴的です。

松本大洋の出世作にして代表作の一つ「鉄コン筋クリート」が実は失敗作だった?

鉄コン筋クリート
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1993~94年「ビッグコミックスピリッツ」に連載。単行本全3巻の作品。純粋でおっとり系のシロと、頭が切れるクロという2人の悪ガキが、自分達の庭である宝町を、再開発しようと目論むヤクザや企業から守るべく戦っていく…。
販売部数は累計100万部を突破し、「伝説的漫画」とも呼ばれ、映画化までされた彼の代表作ですが、実は当初単行本5冊版で販売予定だったのが、3冊に変更された、いわば「打ち切り作品」で、当時失敗作だったとも言われています。たった2万部の初版でスタートした作品が現在でも増刷を続けている、まさに「出世作」です。

松本大洋作品の特徴 1.他の追随を許さない画力(えぢから)

鉄コン筋クリート2
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木版画のような力強いタッチ。「鉄コン筋クリート」より

竹光侍
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線の細いタッチと独特な顔の表情。「竹光侍」より

ナンバーファイブ吾
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回想シーンの柔らかいタッチ。「ナンバーファイブ吾」より

海外でも評価が高い彼独特のタッチは、作品ごとに様々な表情を見せます。枠線以外は全てフリーハンドで、作風やシチュエーションに合わせて使い分ける変幻自在のテクニックは、他の追随を許さないものがあります。画力の高さは日本屈指と言えるでしょう。

松本大洋の名を広く知らしめた名作「ピンポン」

ピンポン
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片瀬高校卓球部に所属する、幼なじみのペコとスマイル。ペコは天才的に卓球が上手いが自信過剰。スマイルは常にペコの背中を追い続けますが、ペコに遠慮して自分の実力を出せずにいました。そんな2人が、それぞれのターニングポイントを迎えます。
ペコは屈辱的敗戦を機に一念発起し、自らの技術をさらに磨きます。一方スマイルは彼の才能を見抜いたコーチの特訓を受け、打倒ペコを目指します。そしてお互いに成長をとげた2人が、インターハイの決勝で雌雄を決することになります…。2002年、窪塚洋介主演で映画化され大ヒットし、松本大洋の名を広く知らしめる事になった作品。この作品から松本大洋のファンになったという人も多いようです。

あの「ワンピース」の作者、尾田栄一郎が松本大洋を「天才だと思った」と語る。

ワンピースの尾田栄一郎氏
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「ワンピース」の作者、尾田栄一郎氏

松本は天才
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松本大洋と尾田氏の対談記事

尾田栄一郎と言えば、累計3億冊の販売部数を誇るお化け漫画「ワンピース」の作者ですが、その尾田氏をして、「ピンポン」を読んで天才っているんだと思った」と、松本大洋を高く評価しています。

松本大洋作品の特徴 2.斬新な音の表現

音の表現1
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野球場の大歓声(「花男」より)

音の表現2
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学校のチャイム音(「GOGOモンスター」より)

松本氏の作品を読むと、音の表現に違和感を感じる事が多い。学校のチャイムといえば普通「キーンコーンカーンコーン」ですが、彼の表現は「リーンゴーンダーンドーン」。また、野球場の大歓声は「ワーワー」ではなく、「ゴォオオオオ」になります。他にも猫の鳴き声が「ニャー」じゃなく「なーご」だったりもします。その既成概念にとらわれない斬新な表現が、強く印象に残ります。そして「確かにこの音の方がリアルだなぁ」と、感じるようになります。
球場の大歓声などは、地鳴りのような音「ゴォオオオオ」の方が読者に伝わりますね。漫画には音がないので、こういう「目で見る音の表現」は非常に重要なファクターであり、彼の表現力の高さを感じます。

松本大洋の母親は、有名な詩人・童話作家の工藤直子さん

工藤直子
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松本大洋氏の母、工藤直子さん

工藤直子詩集1

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出典:http://bambi-eco1020.hatenablog.com/entry/2015/05/09/001449
松本大洋が挿絵を担当した工藤直子の詩集「こどものころにみた空は」

松本大洋について色々とご紹介してきましたが、漫画を読まない方にとっては、「工藤直子の息子」と言った方が通りがいいかもしれません。工藤直子さんは、女性初のコピーライターとしても有名で、小中学校の教科書に自身の詩が掲載されるなど、詩人としての評価も高く、現在でも精力的に活動されています。松本氏の豊かな表現力は、母親の血を受け継いでいるのかもしれません。そして、工藤さんが出された詩集「こどものころにみた空は」では、息子の松本氏が挿絵を担当し、素晴らしい作品となっています。

松本大洋の新境地を開いた重要な作品「竹光侍」

竹光侍
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最後に、いくつかオススメの松本作品をご紹介します。まずは「竹光侍」。キツネ顔の剣豪、瀬能宗一郎は怪しい集団につけ狙われますが、なかなか刀を抜きません。満を持して抜いた伝家の宝刀に、敵は恐れをなして逃げ出します。しかし実は彼の刀は何故か竹光でした。竹光は竹を削った偽物の刀で、人は斬れません。彼は何故竹光を持っているのか…。
この作品は原作が永福一成氏。永福氏は、松本大洋の大学の先輩で、以前はアシスタントも務めていました。その縁で、彼の作品を漫画化するに至ったのですが、松本大洋の新境地を開拓したという意味で、重要な作品と言えます。原作が別人ということで、松本ファンでも敬遠される方がいるようですが、きちんとプロットを構築し、彼の作品として消化している素晴らしい作品です。

松本作品で最もハートフルな作品「花男」

花男
出典:http://www.suruga-ya.jp/product/detail/SL2192

30歳にもなって、プロ野球選手になる夢を追い続けている父親と、母親に育てられ、成績優秀だが小生意気な小学校3年生の息子の絆を描いた、ハートフルな作品です。松本作品の中でも最もほのぼのとして笑いに満ちた、人気の高い作品です。

松本大洋の作品に触れてみましょう。

まとめ
出典:http://kai-you.net/article/2712
「ピンポン」アニメ化を記念して彼がかいたイラスト

漫画界の天才、革命児とも呼ばれる松本大洋について、色々とご紹介してきました。漫画はあまり読まないという方にも、少しは彼の魅力が伝わったかと思います。日本漫画界の歴史に残る、松本大洋という素晴らしい漫画家の作品を是非一度読んでみてください!必ず読まれた方の心に響く、何かを残してくれると思います。