「孤独のグルメ」の絵師が手がける、グルメエッセイを知ってる?

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出典:http://www.masaemon.jp/entry/2012/09/17/000043

「孤独のグルメ」で、ようやくその画力(えぢから)を満天下に示した谷口ジローと、卓越した文章力でファンの多い平松洋子が、グルメエッセイで見事なコラボレーションをしている作品を知っていますか?平凡なグルメ本とは一線を画す2人の作品についてご紹介します。

「孤独のグルメ」の絵師、谷口ジローを知っていますか?

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出典:http://www.city.tottori.lg.jp/www/contents/1385974822650/

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出典:http://gqjapan.jp/fashion/
ルイ・ヴィトン「トラベルブック・ヴェニス」より

谷口ジローと言えば「孤独のグルメ」。この作品で彼の名前を初めて知った人も多いのではないでしょうか?1971年にデビュー後、数々の賞を受賞しながら、日本では商業的に成功しなかった彼が、この作品でようやく一般的な知名度を得ました。以前から海外では高い評価を受け、フランスやイタリアで”最も有名な漫画家”と言えば「谷口ジロー」の名前があがるほどです。フランスの芸術文化勲章「シュバリエ賞」やイタリアで「マンガの巨匠」と言われる「最高栄誉賞」も受賞し、自らの故郷、鳥取県を舞台に描いた「遥かな町へ」は映画化までされています。2014年にはルイ・ヴィトンの「トラベルブック・コレクション」のヴェニス編を描き下ろし、120枚以上に及ぶ繊細なタッチのイラストと、絵に添えられたノスタルジックな詩が、より一層彼の評価を高めています。

「食」に関する秀逸な表現力は唯一無二の作家・平松洋子

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出典:http://www.jprime.jp/tv_net/book/8575

「忙しい日でも、おなかは空く」や「夜中にジャムを煮る」など、「食」に関するエッセイには定評のある平松洋子。彼女の文章には、「美味しい」とか「食感」など、安っぽいテレビのグルメ番組で聞くような言葉はほとんど出てきません。それでいて美味しさが十二分に伝わってくる的確な表現力は、他の作家とは一線を画しています。臨場感たっぷりの美しい文章で紹介されるメニューは、「今すぐコレ食べたい!」となる事間違いなしです。

そんな2人が初めてタッグを組んだ「サンドウィッチは銀座で」

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出典:http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167838690

2008年から2010年まで「オール讀物」で連載されたエッセイをまとめた「サンドウィッチは銀座で」。ただでさえ食欲がそそられる平松洋子の文章に、その一場面を切り取って挿入される谷口ジローの絵が相乗効果を生み、さらに料理の魅力を際立てます。最高のコラボレーションを是非ご一読ください。

主人公は、銀座・木村屋總本店の「小海老のカツレツサンド」

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出典:http://tabelog.com/
銀座・木村屋總本店「小海老のカツレツサンド」

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出典:http://yaplog.jp/globe-t/archive/368
日本橋・千疋屋の「フルーツサンド」

「サンドウィッチは銀座で」では「帝国ホテルのクラブハウスサンド」や「千疋屋のフルーツサンド」など、様々なサンドウィッチが紹介されていますが、その中でも主人公と言えるのが、木村屋總本店2Fのカフェメニュー「小海老のカツレツサンド」です。老舗のパン屋として、あんぱん・ジャムパン発祥の地として有名な「銀座・木村屋總本店」。パンの美味しさは当然として、プリップリの小海老にオーロラソースが完璧にマッチした味は絶品です。
平松洋子が「あまり知られたくない味」とまで絶賛した逸品を是非。

滋賀の山奥で味わう「月鍋」

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出典:http://r.gnavi.co.jp/kbuv800/premium/

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出典:http://ameblo.jp/geoge-v-v/theme-10046444603.html

「サンドウィッチは銀座で」で紹介されている珍しい料理としては、滋賀県比良山の麓、比良山荘の名物「月鍋」があげられます。冬の限られた時期にしか獲れない「月の輪グマ」の肉を使う事からその名がついた鍋料理です。ちょっと薄味で甘辛いすき焼き風の出し汁にサッとくぐらせて食べるのですが、見た目の脂身の多さに反して、食べてみると”くどさ”は全くなく上品なアッサリ味。牛肉と違い、脂身が良質でコラーゲンたっぷりなのだそうです。遠方から毎年通うリピーターが多いのもうなずける最高の一品です。

平松&谷口の最強タッグ第二弾「ステーキを下町で」

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出典:http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167904296

平松洋子と谷口ジロー。「食」エッセイとしては最強とも言えるタッグの第二弾「ステーキを下町で」。日本全国津々浦々をうまいものを探訪し、単に美味しさを伝えるだけはなく、その土地の歴史であったり、料理が生まれた経緯など、その料理を取り巻く「風景」を描きつつ、きちんと美味しさを伝えていく…まさに平松の真骨頂とも言える文章と、谷口の画力(えぢから)が見事にシンクロした、前作に全く劣らない作品です。

珠玉の逸品「レストラン カタヤマ」の「駄敏丁カットステーキ」

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出典:http://blog.livedoor.jp/izakayagypsy/archives/1552457.html
レストランカタヤマ「駄敏丁カットステーキ」

「肉は歯止めがきかなくなる。理性が吹っ飛ぶ…(中略)…肉好きがたらふくステーキを食らいたいとき駆け込む店といえば東向島「レストラン カタヤマ」、その名もオージービーフの「駄敏丁(だびんちょ)カットステーキ」である…。」これは「ステーキを下町で」の一部分ですが、実際お店で注文すると、表紙の谷口ジローの美味しそうな絵そのままの料理が出てきます。牛のモモ肉で最も美味しいといわれる部位「らんいち」のステーキですが、この部位は脂身やスジが多く非常に食べにくい部位でした。ところが店主の片山氏が独自のカット方法を開発、きれいに取り除く事に成功し、このメニューが完成しました。1998年にはそのカット法が特許まで取得したというから驚きです。
「レストラン カタヤマ」でしか味わえない逸品を是非体験してみてください。ちなみに「駄敏丁(だびんちょ)」の由来は、常にあらゆる事にチャレンジし続ける店主・片山氏が自身の事を「レオナルド・ダ・ヴィンチ」になぞらえてつけたペンネームです。

「餃子の王将」まで登場!?

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出典:http://gigazine.net/news/20090925_ohsho_first_shop_1/

「ステーキを下町で」には、「食」のエッセイではまずお目にかかる事のない、「餃子の王将」が登場します。題して「はじめての餃子の王将」。つまり彼女自身未体験の地を、水道橋店・高田馬場店・横浜桜木町店を経由し、ついには京都・四条大宮の「王将・第一号店」を「聖地巡礼」と称して訪れます。王将名物の餃子を「一個食べるたびに確実に満足感を与えてゆくところは、歴戦のピッチャーが投げ込む直球」と彼女ならではの文章で的確に表現。改めて彼女の鋭い観察眼には驚かされます。

谷口・平松の「食」の世界を是非体験してみましょう!

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出典:http://holmesian.jugem.jp/?eid=1206
「サンドウィッチは銀座で」の中に登場する谷口氏の挿絵

読まれた方に、間違いなく今まで感じた事のない感覚を味わわせてくれる2冊のエッセイ。是非一度読んでいただき、まずは近場で行けるお店から体験してみましょう。但し、帯に書かれているように「夜ふけに読むのは危険」ですよ。今すぐ食べたくなりますから。