シュールで魅惑的。なぜか癖になるフランスの作家・モーパッサンの世界

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ギ・ド・モーパッサンをご存知でしょうか。悲劇と喜劇を併せ持った魅惑的な作風で知られるフランスの自然主義作家です。モーパッサンのシュールで独特な世界を覗いてみませんか?

モーパッサンの生涯


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1850年8月5日に、ノルマンディーでブルジョワ階級の両親のもとに誕生します。12歳の時に、両親は不仲から別居にいたり、モーパッサンは母親に引き取られます。パリ大学に進学するも、普仏戦争に召集されてしまいます。しかし、その戦争で敗戦して以来、戦争や争いを憎むようになります。
1875年頃から作家としての活動を始めるようになったモーパッサン。この頃から先天的梅毒による神経系の異常を自覚するようにもなりました。1880年に発表した「脂肪の塊」で文豪としての地位を確立させます。順調な執筆活動のかたわらで、病気による“変人ぶり”は悪化していきます。生涯結婚はせず、最後は精神病院で亡くなっています。

モーパッサンの世界観


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自然主義(事実や真実を描くことに重点を置き、あらゆる美化をしないこと)と呼ばれる、日常の人々の生活に見られる喜怒哀楽を繊細に描いた作風が特徴的です。悲劇と喜劇両面を描くことに長けており、落語のような滑稽なシーンや独特のセンスで笑える描写もある一方で、絶望や孤独、自殺などのテーマも頻繁に扱っています。
彼の悲観的な感性は、戦争の体験から影響を受けているものと考えられています。戦争の経験から、人間の残虐さや暗さを嫌というほど思い知らされたのです。“自然主義”で徹底された彼の作品は、日本の多くの文豪にも影響を与えており、フランス作家の中でも、日本人に愛されている作家であり、非常に多く翻訳されている作家でもあります。

処女作でありながら傑作「脂肪の塊」


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物語の舞台は、普仏戦争に敗れたフランス。プロシア軍による占領状態を嫌い、ブルジョワ(お金持ち)や貴族などが、未占領の遠い街まで避難しようと計画します。乗合馬車が用意され、修道女や“脂肪の塊”と呼ばれている売春婦など10人の男女が1台の場所にのり合います。プロシア軍の将校が売春婦を買おうとして断られたことが理由で、旅の途中で足止めされてしまった一行は、売春婦を説得しようとしますが――
モーパッサンが30歳の時に、彗星のように文壇に躍り出た短編小説であり、彼の文豪としての地位を確立させた作品です。

モーパッサンを知りたいならこの小説「女の一生」


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修道院で教育を受けた清らかな貴族の娘・ジャンヌは、17歳で修道院を出て両親と共に暮らし始めます。そして、これからの人生が美しいものであると希望に胸を躍らせて、美青年のジュリアン子爵を結婚します。しかし、結婚後の夫は、ジャンヌへの愛情をなくし、金に執着するようになり、不倫を繰り返すようになります。また、最愛の息子にまで裏切られるなど、ジャンヌが夢に描いていたものが一つずつ破られていき――
孤独感、絶望感、悲観的な価値観が表現されている、フランス文学の傑作で、ルイ・トルストイにも評価された作品です。


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“自然主義”に重きを置いていた彼の作品は、非常にリアルであり、時には目を背けたくなるほど現実的です。だからこそ、私達読み手側の心をダイレクトに射抜くのではないでしょうか。人生や人間について考えたい時、モーパッサンの作品を道案内にしてみてはいかがでしょうか。

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