「告白」など、独特の文体表現とユーモアのあるストーリー展開が魅力の小説家・町田康

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町田康の小説は、独特の文体表現やユーモアであふれています。上方落語やパンク・ロックの精神により確立されたそのスタイルで、芥川賞受賞も経験した、小説家・町田康の真骨頂とも言える作品を紹介いたします。

笑いがぎゅっと詰まった処女作「くっすん大黒」

くっすん大黒
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筒井康隆に絶賛されたことで注目を集めた、町田康の処女作です。定職にはつかず酒浸りの日々を送る男が部屋で大黒様を見つけ、どうにか捨ててやろうと決心する主人公。しかしなかなか捨てることができず、様々な騒動に巻き込まれていきます。
関西弁の軽妙な語り口や、個性的なキャラクターたちの掛け合いは、まるで漫才のよう。短い中にぎゅっと笑いが詰まった小説です。

ジェットコースターのような文章表現「屈辱ポンチ」

屈辱ポンチ
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うだつのあがらないミュージシャンの「自分」は、友人に頼まれてある男に復讐をすることになります。帆一とともに思いつく限りのいたずらを仕掛けますが、どれもなぜかうまくいきません。
ロックミュージシャンでもある町田康の、奇抜な文章表現を楽しめるのが「屈辱ポンチ」です。まるでジェットコースターのように繰り広げられるストーリー展開は、ページをめくる手を止めさせません。

選評でも評価の割れた芥川賞受賞作品「きれぎれ」

きれぎれ
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老舗の陶器店に生まれた「俺」は、典型的なダメ男。画家を目指してみたものの芽は出ずぼんやりと年を重ねる日々。何か職を見つけようとするわけでもなく、母親に金の無心をして暮らしていました。あるとき母親からお金を出す条件として、お見合いをすることを言い渡されます。
独特な文体は選考委員のなかでも評価が分かれましたが、見事受賞に至った作品が「きれぎれ」です。

人間の感情や魂を描きだした傑作長編小説「告白」


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河内音頭という伝統芸能の曲目「河内十人斬り」を題材にした作品です。
貧乏な百姓の家に生まれた熊太郎は、深い洞察力を持ちながらもあるきっかけにより自暴自棄な生活を送っていました。博打や酒に溺れながらも生きていた熊太郎は、ある時賭場で助けた弥五郎という男とコンビを組み、美人の女と一緒になり、ようやく幸せを掴みかけます。

デビュー20年目の作品。題材は源義経!「ギケイキ 千年の流転」

ギケイキ 千年の流転
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タイトルの“ギケイキ”とは、義経記のことです。義経が千年の時を超え現代に生きている設定の本作。現代に生きる義経が軽妙な語り口で自らの人生を振り返ります。ハルク・ホーガンや英語など、千年分の経験を持った義経がかたる義経記は、面白く歴史を学べる一冊です。
全四巻となる予定の本作は現在も文藝で連載中。河出出版のホームページで冒頭を試し読みすることができます。

映画『爆裂都市 BURST CITY』(1982年)より。当時は町田町蔵として映画にも出演していた町田康(右)

映画『爆裂都市 BURST CITY』(1982年)より。当時は町田町蔵として映画にも出演していた町田康(右)

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ユーモア溢れる言葉使いや、独特な擬音など、一度ハマったら抜け出せない中毒性を持つ町田康の小説。まだ読んだことのない人は、ぜひ一度触れてみてください。

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