胸に響き、心を打たれる…お勧め女流作家の小説

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自分でもうまく言えなかった気持ちを、何で私以上にわかるんだろう…小説を読んでいるとそんな気持ちになることがありませんか?今回は、女性におすすめしたい、心に残る女流作家の小説を紹介します。

小手鞠るい「空と海のであう場所」


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好きで好きでたまらないのに、互いを傷つけ合うことでしか、その気持ちを表現できない、棘だらけの薊のようだった――イラストレーターとして働く木の葉のもとに、作家となったかつての恋人アラシから、童話に挿絵をつけて欲しいと依頼が舞い込み…。
人の出会いと別れと再会を描いた恋愛小説ですが、再生の物語でもあります。痛くて、手放したいのに、どうしても捨てられない気持ちを抱えたことがある人に、たとえ未熟でも心から誰かを想った事がある人にすすめたい作品です。ページを進めていくごとに、じんわりと心に温かさが染み込んでいく物語です。

島本理生「ナラタージュ」


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お願いだから私を壊して、帰れないところまで連れていって見捨てて、あなたにはそうする義務がある――大学2年生の泉のもとに、母校の演劇部の葉山先生から電話がかかってくきます。想いを寄せていた先生からの連絡に、泉は胸をときめかせますが…。
綺麗な文章のなかを泳ぐようにすいすい読め、心の中にすとんと感情がおちてきます。読む年齢によって、読後の感情が変わるような物語のため、何度でも読み返せると思います。胸をかきむしって、絶叫したいほどの熱情を抱いたことがある人におすすめの作品です。

楡井亜木子「世界が終わる夜に奏でられる音楽」


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大学1年生の倉田莉絵は、気の強さから彼氏に「お前にはついていけない」と振られてしまい、長続きしません。同じマンションに住む主婦・文子と交流を深めていくうちに、背が高く綺麗な目をした男の子・耕太と出会い…。
19歳の莉絵と14歳の耕太の、恋愛を超えた絆を描いた物語です。2人の真っ直ぐで純粋な気持ちに胸が震え、莉絵の強さには同じ女性として感動します。ラストまで温かく、読んだ後に少し世界が優しく見えてきます。読んで良かったと素直に思える作品です。

姫野カオルコ「ツ、イ、ラ、ク」


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恋とは「堕ちる」もの――地方の小さな町。学校という閉鎖的で窮屈な箱。それぞれが過ごす学校、友達、家族。小学校から始まった物語は中学校に進み、1人の少女が自分でも気付かないうちに恋に「堕ちて」しまい…。
多くの登場人物の日常や心情が丁寧に描かれ、何か事件が起きているわけでもないが、濃密な時間を重ねながら物語は進んでいきます。願ってもいない、自覚もないのに、どうしようもなく堕ちるものが恋なんだと苦しいほど突き付けられます。恋愛小説の金字塔との呼び声の高い作品で、胸がキリキリするほどの世界に浸ってみませんか。

吉本ばなな「ハゴロモ」


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8年の愛人生活に一本の電話で終止符を打たれ、都会の生活にも疲れたほたるは、たくさんの川が流れる故郷の町に戻り生活を始めます。故郷での出会いや、過ごしていきく日々で、ほたるは少しずつ再生と回復をしていき…。
大人になると、ふと立ち止まりたくなる瞬間が訪れます。自分では気付いていなくても、心が疲れてしまっている方にの気持ちを、魔法のようにふわりと包んでくれる温かくて優しい物語です。何かを置いてきてしまっているような気がしている人におすすめしたい作品です。

江國香織「きらきらひかる」


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アルコール中毒の笑子、同性愛者の睦月は、親のすすめでお見合いをし、戸惑いながらも、お互いの秘密を知り結婚を決めます。お互いを認め合い、穏やかな生活を送る2人でしたが、周囲の声やお互いの関係で2人は傷付け合い、笑子は追いつめられていく…。
人が抱えるどうしようもなさ、真っ直ぐ進めない危うさを登場人物が持っており、どの人物も愛おしく感じます。読んでいるうちに、自分も少しだけ認められていくような、許されていくような、優しさに包まれているような気持ちになります。どのような愛の形も、夫婦の形も、型にはめずに、それぞれが心地よく、ちょっと不安な関係でも良いと思えるような作品です。

小説は、私的なものに感じます。とても個人的で、プライベートなものですよね。登場人物に共感したり、逆に毛嫌いしたり、ちょっとした一文に胸をえぐられたりするものです。今回ご紹介した作品が、思いがけず、心が揺さぶられるような、胸に残るような作品になっていただけたらいいなと思います。