1978年~2014年の36年間、小学館の「小学二年生」に連載された人気漫画「あさりちゃん」。
惜しまれつつ完結を迎えた名作「あさりちゃん」の魅力をあらゆる角度からご紹介していきます。
「あさりちゃん」ってどんな漫画?
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あさり・タタミの浜野姉妹
「あさりちゃん」の主人公は、スポーツ万能だけど勉強が大嫌い、しかも性格が少々ぶっとび気味の小学四年生の女の子、浜野あさり。そして彼女の2歳年上の姉タタミは、あさりとは対照的にスポーツが苦手だけど学校一の秀才で、名門中学を目指しています。何もかもが正反対の二人だけに、家ではいつも大喧嘩ばかりですが、実は大の仲良し。そんな二人が家族や学校を巻き込んで様々なトラブルやゴタゴタを繰り広げる痛快ギャグマンガが「あさりちゃん」です。
「あさりちゃん」の作者は2人いる?
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室山まゆみ(左が姉の眞弓、右が妹の眞里子)
「あさりちゃん」の作者、「室山まゆみ」は、室山眞弓、眞里子姉妹のペンネームです。2人は2歳違いで、中学時代から姉妹で漫画を書き、漫画賞の受賞経験もありました。妹の高校卒業を機に、本格的デビューを目指し2人で上京し、姉はOLとして働きながらチャンスを待ちます。
1年後、「別冊少女コミック」の「がんばれ姉子」でデビュー。この時初めてペンネームを共同名義「室山まゆみ」に決めましたが、姉の本名と読みが同じだった為、税金が全て姉の方にかかってしまい、税務署に説明しても一切認めてもらえなかったという逸話も残っています。
「あさりちゃん」誕生秘話
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初の学年誌連載作品「ハッピー・タンポポ」
元々室山姉妹は少女漫画家を志望し、何度も少女漫画を描いて投稿していました。ところが、たった一本投稿したギャグ漫画が小学館の編集担当者の目にとまり、「小学五年生」のギャグ漫画特集の単発オファーが届きます。その作品が再び高い評価を受け、トントン拍子に連載の話が進み、1977年、小学館の学年誌「小学五年生・六年生」(現在は休刊中)で「ハッピー・タンポポ」の連載が始まりました。この漫画は、友人同士を主人公にしたギャグ漫画でしたが、ある日ふと「友人同士だと、学校や外で遊ぶ時しか接点がないから、新しい話がなかなか浮かんでこない…」と悩んだ室山姉妹は、「いっそ姉妹の物語にした方がいいんじゃない?」と考えます。そう、これこそが浜野あさり、タタミ姉妹の誕生につながったのです。
そして翌1978年、同じく学年誌「小学二年生」で「あさりちゃん」の連載が開始。「ハッピー・タンポポ」は1981年に連載が終了し、室山姉妹の思惑通り、姉妹を主人公とした作品に移行が完了。以後36年間この連載は続いていくのです。
「あさりちゃん」と「ハッピー・タンポポ」の意外なつながり
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「あさりちゃん」に登場する「藪小路いばら」
「あさりちゃん」に登場するキャラクターの一人「藪小路 いばら(やぶのこうじ いばら)」。あさりちゃんの事が大嫌いな大金持ちのお嬢様ですが、実は「ハッピー・タンポポ」にも同名のキャラクターが登場していました。どちらもほぼ同じ設定でしたが、髪型が姉のタタミに似ていた為、髪型だけは変更しています。
ただのギャグ漫画ではない「あさりちゃん」
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「あさりちゃん」第57巻・第16話「ハイスクールあさりちゃん」より
ルーズソックスをはく高校生のあられちゃん。
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同じく「ハイスクールあさりちゃん」より
デコ携帯をいじる高校生のあさりちゃんと、超美人になっている姉のタタミ。
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あさりちゃんが当時の流行語「腐女子」を宣言!!
「あさりちゃん」には、「特別編」として「中学生あさりちゃん」や「ハイスクールあさりちゃん」など、あさりちゃんの未来を描いた作品も単行本に収録されています。また、読者の子供達が興味を持っている事や、流行語・時事ネタなど、常にアンテナを張って情報を収集し、作品に反映させていきました。高校生のあさりちゃんがデコ携帯を持ったり、ルーズソックスをはくなど、常に時代に乗り遅れない新鮮な内容をキープし続けた事が、36年もの長い間人気作品として連載が続いた大きな要因ではないでしょうか。
そして迎えた最終回…その結末は?
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ネットが騒然となった「病気のあさりちゃん」幻の最終回
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「あさりは病気だった」という最終回を否定するカット。
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実際の最終回の最終ページ。
2014年2月28日、単行本100巻目の発売をもって完結した「あさりちゃん」。最終回の内容にファンの注目が集まりました。ところが発売後、その内容について、一時ネット上が騒然となります。その理由は、実は「あさりちゃん」は病弱で入院しているあさりちゃん本人が描いていた漫画だったという、あまりにも衝撃的なラストだったからです。でも、実はこれ、最終回の内容について読者から「こうしたらいいのでは?」という投稿があり、100巻の「作者のぺえじ」で試しに描いてみたもので、その後に「こんなのあさりじゃない!」と否定するカットが入っていました。
実際の最終回は、姉タタミが小学校を卒業し、36年間「永遠の四年生」だったあさりも5年生になる。だからこれで終わります。という、比較的あっさりとしたものでした。その理由は、後に明らかになります。
単行本「100巻」と「1巻」、表紙の秘密。
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「あさりちゃん」第100巻の表紙(左)第1巻の表紙(右)
「あさりちゃん」第100巻発売時、その表紙が第1巻と同じポーズではないかと話題になりました。これは、ファンレターで「先生の絵は第1巻の頃からちっとも変わりませんね」という手紙がたまに来るので、「じゃあ見比べてもらいましょう」という意図で、比較しやすいようにあえて同じポーズにされたそうです。
ギネス世界記録に認定!
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「日本漫画家協会賞」大賞の授賞式
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ギネスブック受賞を喜ぶ室山まゆみ
2014年9月、「二人組による1コミックシリーズ最多発行巻数(女性作家)」としてギネス世界記録に認定された事が発表されました。数年前に読者から「ギネスブックに載るかもしれないから、申請してみては?」という手紙をもらい、二人して「そんな事ありえなーい」と笑い飛ばしていたとか。まさかの現実となり、「すごく誇らしい思いです」と話されていました。
また同年、「第43回日本漫画家協会賞」コミック部門の大賞も受賞。授賞式の会見で、何と「「あさりちゃん」の増刊が出ます」と発表し、ファンを喜ばせました。
「あさりちゃん」は不滅です。
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2014年7月に発行された小学二年生増刊「あさりちゃん祭り」
「日本漫画家協会賞」大賞授賞式の会見で話されていた通り、2014年7月、小学二年生9月号増刊として「あさりちゃん祭り」が発売され、「5年生」になったあさりちゃんが登場しました!100巻目の結末があっさりしていたのは、この展開を想定していたからだったのでしょう。また、この本には、あさりちゃんが生まれるきっかになった漫画「ハッピー・タンポポ」も収められていました。
翌年2015年夏にも増刊号が発売、「あさりちゃん」は不滅のマンガとして、これからもファンを喜ばせてくれそうです。
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