手塚治虫「ブラック・ジャック」の名言&恋愛エピソード

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手塚治虫の漫画家生活30周年記念作品にして代表作

マンガの神様と呼ばれる手塚治虫の代表作の一つ、「ブラック・ジャック」をご存知ですか?数回のアニメや実写化を経て、終了そして作者の逝去から30年が経過した今もなお関連作品が発表され続ける、医療マンガの金字塔です。感動するエピソードや名言が多いことでも有名な本作ですが、今回は恋愛にスポットを当てた5作品をご紹介します。

「この瞬間は永遠なんだ」

出典:http://ameblo.jp/
作中、唯一と言っていいB・Jから愛を告白するシーン

ある日、ブラック・ジャックのもとへ大型貨物船の船医を務める旧友「如月恵」から一本の電話が入ります。一時帰国した彼と横浜で会うため、取り出したアルバムには美しい女性の写真が収められていました。やきもちを焼くピノコに「その女性はかつての恋人であり、すでにこの世に存在しない」「その女性の兄にアルバムを渡すために会いに行く」と説明します。

港の見える丘公園で如月と再会したB・Jでしたが、いつの間にかピノコが姿を消してしまいます。心配して探しに行くB・Jをよそに、隠れていたピノコが姿を現し、如月に詳しい話を聞かせてとせがむのでした。

時は戻り…医大での医局員時代、B・Jと如月の妹は先輩後輩の間柄でした。当初は不愛想で周りから孤立していたB・Jを怖がっていた彼女も、彼に隠された優しさに触れ、そしてある夜、不良に襲われたところを助けられたことで常に陰ながら見守ってくれていたことに気付きます。いつしかB・Jを愛し始めていることに気付いた彼女を、ほどなくして恐ろしい病魔が襲います。それは悪性の子宮ガンでした。

彼女の命を救うために医局員でありながら、たった一人でオペを行うと言う彼に、周囲は反対しますが、彼はそれを押し切り強行します。オペ開始前、手術室で二人は最後の会話を交わします。これから子宮と卵巣を切除し、女性特有の器官を失う彼女に「心から愛している」と告白するB・J、そして、やっと言ってくれたと嬉し涙を流す彼女。キスをした後「手術が終わればこの気持ちは消えてしまうののね」とつぶやく彼女に、彼は「いやそうじゃない、この瞬間は永遠なんだ」と応えるのでした。

一時帰国を終え、再び貨物船に乗り込む如月の前に「アルバムを渡し忘れた」とB・Jが現れます。そして「きみのむかしの写真だ」と言って手渡します。そう、彼は妹ではなく、かつて愛した女性「恵」本人だったのです。別れの挨拶の後、出港してゆく船を彼は一人静かに見送るのでした。作中で唯一、B・Jから告白するという珍しくも、切ないエピソードです。

手塚治虫漫画全集「ブラック・ジャック」第2巻 第7話 めぐりあい
初出:週刊少年チャンピオン1974年11月25日号

「ジャックからクイーンへ」

出典:http://middle-edge.jp/
気になる手紙の内容は別エピソード「終電車」で判明

女医が患者の脚を切断するという、衝撃的なオペシーンから物語は始まります。容姿端麗な女医「桑田このみ」を同僚や部下たちは陰で、冷酷なメスの女王と揶揄します。仕事を終え、恋人「ロック」との食事を楽しむ彼女に、彼は病院で耳にした彼女のうわさについて伝えます。

それは「女ブラックジャック」「ブラック・クイーン」と呼ばれているという不名誉なものでした。気にしていないという、このみに対し、外科医を辞めてほしいと言うロック。恋人にも理解してもらえないと嘆く彼女は、夜の街で酒に溺れ、あるバーでB・Jと偶然出会うのでした。酔った勢いから冷酷な同類同士、仲良くしようと絡む彼女を不快そうな表情で見送るB・J。

そんなある日、このみの元へ衝撃的な連絡が入ります。それは恋人ロックが事故に巻き込まれ、重傷を負ったというものでした。脚を切断するほかないという状況で、このみは苦悩します。そんな彼女のもとに、B・Jがクリスマスプレゼントと手紙を持って訪ねてきます。「恋人の命に関わるとき、手でも足でも切れるか?」と問うこのみに対して、B・Jは迷わず切ると答えます。そして、ただならぬ表情から、それが彼女の恋人のことであると知った彼は、落ち着くようにと鎮静剤と称した睡眠薬を渡すのでした。

眠り始めた彼女を置いて、B・Jは手術室へ向かいます。数時間後、目を覚まして慌てて手術室へと向かうこのみを待っていたのは、すでに手術を終えて眠っている恋人でした。切断せずに手術を成功させたと称賛する同僚たちに「自分ではない、誰がオペをやったのか知っていると」涙を流して安堵するこのみ。そしてクリスマス・ソングが流れる街をB・Jは一人歩き去ってゆきます。「ジャックからクイーンへ」と書かれた手紙を破りながら…。

手塚治虫漫画全集「ブラック・ジャック」第5巻 第1話 ブラック・クイーン
初出:週刊少年チャンピオン1975年1月13日号