【シネマジーンの映画ノート】映画『ルームロンダリング』レビュー

レコメンド

心を動かす、“ありがとう”の力

「事故物件」「幽霊」という、ホラーなモチーフを中心に据えながらも、とてもポジティブで心が洗われる本作。オーソドックスな魅力と斬新さが見事に融合したストーリーです!

池田エライザさん演じる八雲御子は、幼い頃に父親を亡くし、母親は失踪、祖母も亡くなってとうとうひとりぼっちになってしまいます。天涯孤独になってしまった彼女は、オダギリジョーさん演じる叔父の悟郎に住む場所とアルバイトを用意してもらって生活していました。この悟郎が、何とも怪しい!不法滞在している外国人にビサを偽造したり、立ち退きに応じない家にサッカー少年たちを率いて圧力をかけに行ったりする、悪徳不動産店を営んでいます。そんな悟郎が御子に斡旋するアルバイトが「ルームロンダリング」!

それは、自殺や他殺などで人が亡くなった事故物件に誰かを住まわせることで、次の入居者への説明義務を失わせるという秘密のお仕事。ご近所との交流はご法度で、短期間で転々と引っ越しを繰り返すこの仕事は、友達も彼氏もおらず自分の殻に閉じこもっている御子にはぴったりのようです。ですが、事故物件への入居を繰り返すうち、いつしか彼女は幽霊が見えるようになっていたのです。そうして御子は、この世への未練を残した自己主張の強い幽霊たちに振り回されていきます。

御子を演じる池田さんはご自身も舞台挨拶などで御子に対してシンパシーを感じていると話していますが、作中では他人と距離を置いて自分の世界に没入する、影のあるこじらせ女子そのもの!御子の不幸せやそれが原因で人生を諦めてしまっているというこじれた心が表情や仕草、話し方や人との接し方を通して見事に映し出されています!そんな御子が人(幽霊)に徐々に心を開いていく過程と変化していく様子はすごく可愛らしい!

そして池田さんだけでなく、怪しげな存在感を放つオダギリさん、心の清いパンクスの幽霊を演じた渋川清彦さん、自分を殺した犯人への恨みを募らせるOLの幽霊に扮した光宗薫さん、不器用だけど御子の身を案じる心優しい隣人役の伊藤健太郎さんと、キャストの皆さんが全員はまり役なんです!オダギリさんのようにこれまでも癖の強い役柄を演じてきた方から、これまでとは全然違うキャラクターを演じている伊藤さんまで、もともとこういう人物なんじゃないかと思ってしまうほど、それぞれの役柄が完璧に作り上げられています。

さて、幽霊たちや悟郎がそれぞれに未練や目的を持って動いているのに対して、御子は徹底的に無感情で無関心を貫く序盤。彼女は自分の人生とか境遇とかを諦めてしまっているから、「なるようになれ」という感じでそうそう動じることもありません。そんな彼女が、ある人物との接触をきっかけにこじれていた心を解きほぐして前に進み始めるのですが、私はそのシーンがとても好きです。世の中には嫌なことがたくさんあって、イライラすることも理不尽なこともあります。そういうネガティブな思いが積もって、ちいさな幸せや素敵なことを発見する力が埋もれてしまうことも、多分珍しいことではないです。でも、ほんの小さな出来事が、そんな状況を変えることもあるんだと思います。そういうきっかけは意外にたくさんあるけど、なかなか気づけないのかもしれません。御子がそのきっかけを逃さずつかむことができた瞬間は、ぱっと青空が広がるような晴れやかな気持ちになって、クライマックスに向けて「御子がんばれ!」という気持ちがどんどん高まります。

微笑ましく、笑えるハートウォーミングコメディでありつつも、ハッとさせられるような心に刺さる言葉がたくさん紡がれる本作。ステキな物語に触れたなという思いで鑑賞を終えました。エンドロールも素敵で可愛いくて、最後まで見逃せません!

映画『ルームロンダリング』本編映像

『ルームロンダリング』本編映像

『ルームロンダリング』ストーリー

5歳で父親と死別し、その翌年には母親が失踪してしまった八雲御子(池田エライザ)。その後は祖母に引き取られたが、18歳になると祖母も亡くなり天涯孤独に。度重なる不幸で自分の殻に閉じこもってしまった御子のところへ、母親の弟である雷土悟郎(オダギリジョー)が現れ、住む場所とアルバイトを用意してくれることに。しかし、そのアルバイトとは、ワケあり物件に自分が住むことによって‟物件を浄化する“というルームロンダリングだった。ルームロンダリングを始めて以来、幽霊が見えるようになった御子。幽霊と奇妙な共同生活を送る中、御子は彼らのお悩み解決に奔走させられ…!?

『ルームロンダリング』公式サイト
7月7日(土)より絶賛公開中
出演:池田エライザ、渋川清彦、伊藤健太郎、光宗薫/オダギリジョー
監督:片桐健滋
脚本:片桐健滋・梅本竜矢
配給:ファントム・フィルム
©2018「ルームロンダリング」製作委員会

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