様々な人々の視点から物語が進み、それぞれが交差しながら結末へ向かってゆく群像劇を、アメリカの映画になぞらえて「グランド・ホテル方式」と呼びます。個性豊かな登場人物たちから、あなたは何を感じますか?
「グランド・ホテル方式」の由来『グランド・ホテル』
舞台はベルリンの超一流ホテル「グランド・ホテル」。落ち目の人気バレリーナ、危機に瀕した大企業の社長、借金まみれの自称・男爵、一生に一度の思い出にホテルに泊まりに来た老人が、それぞれ出会い、またすれ違いながらホテルの中で物語を展開させます。
群像劇という、当時としては斬新だったストーリー展開で観客の心をつかみ、第5回アカデミー賞作品賞を受賞しました。以降、このような1つの物語を様々な人物の視点で描く方法を「グランド・ホテル方式」と呼ぶようになりました。
力強いメッセージ性を持つ超大作『マグノリア』
過激な男性向け自己啓発セミナーを主催する青年には、過去に父親との確執がありました。まじめだがパッとしない警官は、薬物中毒の女性に恋をし、彼女の父親は人気クイズ番組の司会者で余命あとわずか。番組を作り上げた男は死の淵にたち、彼の若妻は心を病んでいます。男女9人が織りなす物語は、ありえないような偶然に満ちたものでした。
監督・脚本を担当したポール・トーマス・アンダーソンは、本作でベルリン国際映画祭金熊賞を受賞しました。ロサンゼルスのある街を舞台に、男女9人が過ごす強烈な24時間を描いています。全編にわたって使用される、エイミー・マンの楽曲も印象的な作品です。トム・クルーズやフィリップ・シーモア・ホフマン、ジュリアン・ムーアといった豪華なキャストも見どころとなっています。
クリスマスに起きた奇跡の物語『ラブ・アクチュアリー』
出典:http://www.independent.co.uk/
クリスマスを控えたロンドンでは、新たな英国首相が誕生。カムバックを図るロックスターはマネージャーともめごとばかり。妻を失った男は、残された妻の連れ子の愛し方に迷う一方、結婚式を挙げる男女に愛を求めてアメリカに旅立つ青年、言葉の通じない女性と恋に落ちた小説家など、あちこちで愛が生まれていきます。
「love actually is all around」(愛はいつでもそこにある)という言葉の頭をとったタイトルが冠された本作は、タイトル通りロマンティックコメディです。クリスマスのロンドンを舞台に、19人の男女が9つのストーリーを展開させます。ラブコメの名手ヒュー・グラントやリーアム・ニーソン、コリン・ファース、キーラ・ナイトレイ、といったそれぞれが主役級の英国俳優たちの共演を楽しめます。
一発の銃弾が世界中の人々の運命を変えてゆく『バベル』
出典:http://plaza.rakuten.co.jp/
モロッコで放たれた一発の銃弾が、観光客を乗せたバスに命中。バスに乗っていた、すれ違いが続いていた夫婦の妻が負傷します。アメリカで夫婦の子供を預かっていたベビーシッターには、自身の息子の結婚式が迫っていました。銃弾を放った銃の持ち主は日本人。彼には聾者の娘がいました。
アレハンドロ・イニャリトゥがメガホンをとった、通じない言葉と届かない心を題材にした作品です。ブラット・ピットとケイト・ブランシェットが共演。日本からは菊地凛子と役所広司が参加しました。
重なる夢の世界で繰り広げられるアクション!『インセプション』
コブ(レオナルド・ディカプリオ)は、人の夢に入り込みアイデアを盗む企業スパイ。そんなコブのもとに、斎藤(渡辺謙)がアイデアを入れ込む仕事(インセプション)を依頼してきます。チームをそろえて挑むコブたちでしたが、相手は夢を守る訓練を受けていました。
主演にレオナルド・ディカプリオ。共演にトム・ハーディ、渡辺謙、ジョゼフ・ゴードン=レヴィットを据えたSFアドベンチャー大作です。東京でも撮影が行われ、ヘリポートでのシーンや新幹線内でのシーンに使用されました。
様々な人生が交差する「グランドホテル方式」の映画をご紹介しました。いかがでしたか?たくさんの人生を一堂に見られるのは映画ならでは。人々の交わりが織りなす作品世界を堪能してみては?
『グランド・ホテル』
© 1933 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
『マグノリア』
© 2000 New Line Productions, Inc. All Rights Reserved.
『バベル』
PG-12
©2006 by Babel Productions, Inc. All Rights Reserved.
『インセプション』
© 2010 Warner Bros. Entertainment Inc.
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