こんな青春送りたかった!あの頃に戻りたくなる青春小説

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中学、高校、大学…楽しい思い出ばかりの人も、もう戻りたくないと思っている人もいると思います。こんな友達がいたら、こんな場所だったらあの頃に戻りたい、良い思い出は多くないけれど、それでもあの頃を懐かしく思い出せるような小説を紹介いたします。

坂口理子「フロイデ!~歓喜の歌でサヨナラを~」

坂口理子「フロイデ!~歓喜の歌でサヨナラを~」
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音大4年生の水沢祐一たちは、大晦日の定期演奏会を乗り切れば無事に卒業でしたが、教授に70年ぶりの「第九」の演奏で「こんな演奏では卒業させられない」と告げられてしまいます。焦ったメンバーたちは、練習のために忍び込んだ旧音楽堂で、かつて音大生だった幽霊たちに出会い、定期演奏会で取り憑いてもらうことにするのですが…。
第2回WOWOWシナリオ大賞優秀賞の脚本を小説化した作品です。ひたむきに頑張ることに遅いことはない、例えば卒業直前だったとしても。メンバーの一員になって第九を奏でたいと思うこと間違いなしの、爽やかで切ない青春小説です。

吉田修一「横道世之介」

吉田修一「横道世之介」
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大学進学のために長崎から上京した横道世之介。友達の結婚や出産、憧れの年上の女性、女性に興味のない友達、お嬢様のガールフレンドなどと出会いながら日々を過ごした、ちょっぴり図々しく愛すべきお人好しの世之介の大学1年生の生活を丁寧に描いた作品。
のんびりした大学生活のストーリーかと思いきや、グイッと心を掴まれる展開になっていきます。そして言いたいことはひとつ、私も世之介と出会いたかったな。とにかく主人公の世之介が、普通の少年なのに魅力的で、一緒に青春時代を過ごして友達になりたかったなと思います。温かくて切ない、青春にぴったりの感情が湧き起る作品です。

花形みつる「アート少女」

花形みつる「アート少女」
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実力派の3年生が卒業して、オタクや引きこもりなど個性的なメンバーばかりが残った美術部。部長になった節子だが、弱小部活と校長先生に目をつけられたために、次々に難題を押し付けられ、存続の危機に陥り…。
読みながら声を出して笑えるほどのシーンや、思わずうるっときてしまうシーンなど、一瞬一瞬を駆け抜けるかのごとく、ページすべてに青春が詰まっていおり、エネルギーが溢れている作品です。学校に、こんなに面白い美術部があるなら入部したい!節子やバラエティに富んだメンバーと、笑ったりケンカしたりしながらもアートに真っ直ぐ向き合う、そんな毎日を一緒に過ごしたかったなと思わずにいられない作品です。

恩田陸「夜のピクニック」

恩田陸「夜のピクニック」
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高校生活最後を飾る行事「歩行祭」。全校生徒が24時間かけて80kmを歩く伝統行事です。3年生の貴子は、最後の歩行祭で、学校生活の思い出や夢などを友達と語らいながら、密かな賭けを胸に抱いて挑んでいました…。
学生時代には、その時期にしかわからない気持ち、学校の空間にいる人でしか共有できないものが、確かに存在していたと思います。そんな抱えていた気持ちや、自分でも気付かなかった名残惜しい時間があったことを思い出させてくれる作品です。

柴崎友香「きょうのできごと」

柴崎友香「きょうのできごと」
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友人の引越し祝いに集まった男女数人の仲間たち。彼らが、その日経験したこと、抱えている事情――はたからみれば、なんてことない大学生のごくありふれた一日を描いた物語…。
登場するのは、どこにでもいそうな大学生たち。誰にも言えないような問題を抱えている人もいなければ、映画の主人公になるような事情を抱えている人もいないです。でも、いつの間にか読み終わりたくない、ずっと物語が続いてほしいと思ってしまうような作品です。それは、多くの人にとって、何でもない日々の積み重ねこそが青春だったからかもしれません。自伝を書けるような出来事はなかったけれど、過ごしたかけがえのない日々は確かにあって、忘れたくないものがあったことに気付くからかもしれません。大人になった人に、何でもないあの頃を思い出させてくれる作品です。

こんな青春を送りたかったなと思いながら、登場人物と一緒に時間をともに過ごせるのが小説の面白さだと思います。また、同じ経験ではないのに、登場人物と同じ感情を抱えたことを思い出して、自分の過去を急に懐かしく思えたりすることもあります。楽しい青春を送った人も、楽しくなかった人も、改めて小説でもう一度青春を楽しんでみるのはいかがでしょうか?読んでいたら、自分の恥ずかしかったあの頃も優しく思える瞬間も訪れるかもしれません。