手塚治虫「ブラック・ジャック」の名言&恋愛エピソード

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「私、これでも医者ですわ。私が手術をするんです!」

出典:http://blogs.yahoo.co.jp/
恋と兄弟愛が交錯して研修医は成長してゆく

交通事故で重傷を負ったブラック・ジャックは、骨折した右腕を手術するため入院します。入院先である個人病院・新宿南外科の執刀医は、かねてから「顔にツバでもはいてやりたい」と言うほどB・Jを快く思わない若手男性医師でした。手術を進めながらも局所麻酔で意識があるB・Jに「腕の神経をひとつでも縫合しなければ、切断してしまえば、これから先、何百人かの患者が泣かずに済む」「悪徳天才医の一巻の終わり…」と、B・Jを脅しますが、無事に手術は終了します。

助手である研修医の看護を受けながら「先生の腕はなかなかたいしたものですね」と、自身を脅迫した医師を称賛するB・Jに対して、「先生こそ医学会の大芸術家」と応える彼女は、海外にまでその名を馳せている彼を尊敬していたのでした。

やがて尊敬は恋へと変わり、それを男性医師は苦々しく見ています。そして感情をあらわにして「もっといそがしくさせてやる」と厳しく指導します。退院間近のある日、男子医師から「自分のポリシーを曲げててもお願いしたいことがある」と呼び出されます。その内容は、研修医は彼のたった一人の妹であり「自分と違いB・Jを世界で一番尊敬している。どうか妹と結婚してほしい、女医としての勉強も手に付かず、もしも結婚してもらえないのなら、二度と妹に姿を見せないでほしい」というものでした。

ほどなくして、彼女の知らぬ間にB・Jが退院していたことを知った妹は、兄を卑怯者と責め、病院から飛び出します。慌ててそれを追う兄は、交差点でダンプカーにはねられ重体に陥ってしまいます。すぐ手術をしないと命が危ない状況下で、研修医はB・Jに依頼の電話をかけます。右腕が使えず役に立てないし、もうお互いに会わない方が良いと返答する彼に対して、彼女は「いつ先生にオペをお願いしまして? 私、これでも医者ですわ。私が手術をするんです!」と、立ち会いでの指導依頼であることを力強く返すのでした。すぐに駆けつけたB・Jを前にオペが開始され、物語は幕を閉じます。

手塚治虫漫画全集「ブラック・ジャック」第8巻 第5話 B・J入院す
初出:週刊少年チャンピオン1977年1月24日・31日号

「私の顔の皮フを使って……お願い……」

出典:http://middle-edge.jp/articles/Ct895?page=2
死ぬ間際、想いを寄せるB・Jへ最期の願いを伝える

ある日、ブラック・ジャックは瀬戸内海の小さな離島で診療所を営む女医「清水きよみ」を訪ねます。かつて窮地を救ってくれた彼女の兄・幾男に会いにきたものの、彼はその前年にがけ崩れで命を落としていたのでした。幾男が提供してくれたメスのおかげで患者の命が助かり、そのお礼として自分の宝である「特別なメス」を進呈したいという彼に対して、きよみは内科医なので不要と突き返します。

本土への連絡船最終便に間に合わず、きよみの診療所へ泊まることになった夜、島の子どもたちに集団食中毒が発生します。手伝ってほしいという依頼に対して、B・Jは内科は専門外だからと、まるで昼のやり取りの意趣返しのように断ります。きよみは憤りを感じ、一人で島中を往診して回り、疲れ果てて診療所へと戻ります。そこで目にしたのは、つい先ほどすれ違ったばかりの校長先生が、がけから転落して重傷を負った姿でした。

B・Jは風が強く、こんな騒ぎの中、何か事故が起きるのではと予測していたのです。B・Jはきよみに休憩を勧め、外科処置を始めるます。手伝いを申し出る彼女に対して、断りながらもB・Jは「特別なメス」の切れ味を見せ、手術は無事成功します。B・Jの素晴らしさに感銘を受けたきよみは、気恥ずかしそうに「メス…いただけません……?」と言うのでした。その後、長く続く大雨で島への滞在を余儀なくされるB・Jと過ごすうちに、きよみは彼を好きになっていることに気付きます。B・Jが帰ってしまうので、一緒に島を出ようかと考えていると想いを伝えるきよみに対して、彼はくだらないことだと冷たく一蹴します。

そんな中、長雨で再びがけ崩れが発生、きよみは子どもをかばって下敷きになってしまいます。B・Jは2人の外科手術を行いますが、その際、きよみが心臓に先天的な疾患を抱えた手術に耐えられない身体であることに気付き、祈るような気持ちで終えるのですが…。子どもは助かったものの、きよみは最期に自分の皮膚をB・Jに移植して欲しいと言い残し、息を引き取ります。しかし彼は「あなたの美しい顔にメスを入れたくなかった」と申し出を断り、島を後にするのでした。

手塚治虫漫画全集「ブラック・ジャック」第10巻 第2話 土砂降り
初出:週刊少年チャンピオン1977年7月4日・11日号

「なにをしょげてる!?おまえ 私の奥さんじゃないか」

出典:http://blog.livedoor.jp/

定期連載としての最終話とされるエピソード(その後、読み切りでは継続)です。

蒸気機関車に乗って移動中のブラック・ジャックは、乗務員に切符の検札を求められますが、どこを探しても見つかりません。買い直すと申し出るB・Jに対して、乗務員は「ここに落ちていましたよ」と切符を拾い渡します。買った覚えがないことに気付いたB・Jでしたが切符には彼の名前が書いてありました。「その切符はあなた専用なんです」と言う乗務員はどこかで会った覚えのある男でした。

B・J以外に乗客のいないどこか奇妙な車内で、彼はかつて愛した女性・めぐみが座っていることに気付きます。そしてドクター・キリコや、既に故人であるはずの恩人・本間医師など、彼の人生に密接に関わってきた様々な人たちとの邂逅をはたします。いつの間にか場面は手術室へと変わり、本間医師を追って行った先には、後を託されたという助手と名乗る美女が立っていました。

彼女を見てB・Jは「どこかで見かけた…いやしょっちゅう会っている気がする」とつぶやき、その美女が本作のマスコットキャラでおなじみの「ピノコ」であることに気付くのでした。奇形嚢腫から人工的な処置で人間へと育てられた彼女は、外見は幼女でも実際の年齢は21歳、本来の姿・八頭身の美女として彼の前に現れたと言います。そんな彼女にB・Jは「八頭身にも美女にも興味がない」と応えます。涙を流し「アッチョンブリケ」と嘆くピノコ対して彼は「最高の妻」だと伝え、手術室へと向かうのでした。

再び場面は変わり、B・Jは飛行機の機内にいました。これまでの出来事は、まどろみの中で見た夢だったようです。夢の中で自分自身を見つめ直したブラック・ジャックは、これからもメスをにぎって奇跡を生み出していく…と未来を暗示して物語は完結します。

手塚治虫漫画全集「ブラック・ジャック」第18巻 第11話 人生という名のSL
初出:週刊少年チャンピオン1978年9月18日号

神業と呼ばれるテクニックから天才外科医として、また同時に医師免許を持たず法外な報酬を要求することで悪徳医師としても世界中にその名を知られる「ブラック・ジャック」。彼は作中では一貫して強欲かつ冷酷な人物として描かれていますが、彼の真意を知った他者はその素晴らしさに気付き、惹かれてゆきます。そんなキャラクターを通して「生命の素晴らしさ」をテーマに、手塚マンガの中でも特に名言が多いと言われています。まだ未読の方は、一度手に取ってみてはいかがでしょうか。

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