本当に愛すること、生きる意味とは?読み継がれる絵本「100万回生きたねこ」

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本当に愛すること、生きる意味とは?読み継がれる絵本「100万回生きたねこ」
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「百万回生きたねこ」という絵本をご存知でしょうか。佐野洋子さんの作品で、その深いテーマと結末に心打たれる人が多く、発刊以来長い間読み継がれています。今回は「百万回生きたねこ」がなぜ読み継がれているのか、その秘密に迫ります。

「百万回生きたねこ」どんなお話?

百万回生きたねこ

「あるところに、百万回の生を生きたねこがいました。船乗りやどろぼう、マジシャンやおばあさん、女の子などいろいろな人に飼われていました。そして、ねこが死ぬたびに、その飼い主は大きな声を上げて泣き、土に埋めました。しかし、最後にねこは野良猫として生まれ、初めて誰のものでもない生を獲得するのですが…。」
淡々と語られるようですが、少し切ないお話です。

読み継がれる理由はそのストーリー?その1.テンポ感の良さ

百万回生きたねこ(2)

物語の大半は、ねこがどのような生を今まで生きてきたかが語られます。王様のねこだった時は、戦争好きの王様の横にふてぶてしく構えています。しかし、ねこが死んでしまったその時、王様は戦争を注視して泣きながら引き上げます。他にもマジシャンだった場合は切断マジックが失敗、ねこは真っ二つになってしまったり、どろぼうのねこだったときは番犬に噛み殺されてしまったりと、なかなかハードな結末を迎えています。
子供に受ける理由は、このコロコロと飼い主が変わり、ねこの生活スタイルや死に様も変化することでしょうか。だいたい1つのライフスタイルにつき、2〜3ページで済ませれているため、悲愴感もなくテンポよく進んでいきます。

読み継がれる理油はストーリー?その2.愛される側から愛する側へ

百万回生きたねこ(3)

物語後半で、百万回生きたねこは初めて野良猫として生まれます。そして、誰のものでもない生を謳歌します。その中で出会った白猫を愛することになるのです。いままで百万人の飼い主がねこを愛し、その死に涙を流してきました。しかしここに来てねこは、初めて自分が愛する側に立つのです。どんな自慢も「そう。」とだけ受け流し、決して自分をチヤホヤしてくれるわけではない白猫に、ねこはいつしか守るべき、愛するべき家族を見出しています。このねこの心情の変化こそ、この物語の最大の魅力といえましょう。

読み継がれる理由番外編〜日本が生んだ偉大な絵本作家佐野洋子


百万回生きたねこ(4)
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「百万回生きたねこ」の作者、佐野洋子さんは日本を代表する絵本作家の一人です。多くの人に惜しまれながら、2011年にこの世を去られました。彼女の絵のタッチは水彩画のように淡い色彩で、ほんのりとあたたかみを感じられる作風が特長です。またお話もシュールな設定であったり、少し悲しげなお話であったりと絵本の枠を超えた魅力があります。
「だってだってのおばあさん」や「おじさんのかさ」など、一度は読んだことがあるのではないでしょうか。

舞台化もされた「百万回生きたねこ」

百万回生きたねこ(5)

「百万回生きたねこ」は、絵本にとどまらない人気を誇っています。その代表例が舞台化です。少し前の話になりますが、森山未來が百万回生きたねこに扮し、話題になりました。絵本の中とはまた違うお話も展開されており、再演は難しそうですが、機会があればぜひ見てみてください。

いかがでしたでしょうか。誰しもが知る有名な絵本「百万回生きたねこ」には、こんな魅力があったんですね。子供から大人まで、誰もが読んでは涙を流し、胸を打たれる名作でした。
まだお読みでない方も、ぜひ一度手にとってみてくださいね。

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